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映画ノート

この道は母へとつづく


2005年(ロシア)監督:アンドレイ・クラフチューク出演:コーリャ・スピリドノフ/デニス・モイセンコ/サシャ・シロトキン【ストーリー】極寒のロシア。フィンランドとの国境近くの孤児院に一組のイタリア人夫婦が養子を求めてやって来る。裕福な家庭の養子となることは、孤児たちにとって唯一の希望の光だった。この日は6歳の少年ワーニャが選ばれた。そんなある日、先に養子に出された親友ムーヒンの母親が、捨てた我が子を取り戻しに来るという騒動が起こる。ワーニャは同じことが自分の母親にも起こりはしないかと想像した途端、実の母に会いたい気持ちが抑えられなくなってしまう。彼はわずかな手がかりを頼りに母を見つけ出すため、ついには孤児院を脱走するのだったが…。
■感想
これは孤児の少年が顔も知らない母親に会うために、孤児院を脱走したという新聞記事をもとに描かれた作品だそうです。

ワーニャの暮らす孤児院では、定期的に養子を求めてやってくる家族が訪れます。
子供たちは自分をアピールしようと懸命に良い子の顔をつくるんですねぇ。
これは「サイダーハウス・ルール」でも同じようなシーンを目にしましたが、
本作では孤児院に暮らす子供たちのたくましさが印象的でした。

小さな可愛い子供はもらわれていく確立が高いけれど、大きくなるほど不利なのでしょう。
大きい子供たちは自分たちで小銭を稼ぐ方法を身につけ、暮らしているんですね。
リーダー格の子供もいて、そこはまるで小さな社会。

子供を斡旋するさもしい業者がいて、その斡旋料を当てにする孤児院。その辺りの描き方が非常にリアル。

6歳のワーニャがイタリアの裕福な夫婦に引き取られる事が決まり、
周りの子供たちは羨望の眼差しを向ける事になります。でもいじめるとかではないんですね。
これまでに何度も経験している事。彼らの運命として受け入れているのです。

イタリアに引き取られてイタリア人になるワーニャを、その日から皮肉と羨望を込めてイタリアンと呼ぶ子供たち。

これ英語のタイトルもそのまま「The Italian」なのに、どうして邦題になると「この道は母へとつづく」とかになるの??
あまりにも古くさい感じがするんですけど。。

後半は母に会うために孤児院を抜け出したワーニャの冒険という展開。
ロシア人って自分の事に一生懸命なのか。。旅の途中で遭遇する人たちの温かさを描くというものではなく、
むしろシビアな国の貧しさを感じる内容でした。

どうしてもママに会いたい。少年のあまりにも一途な気持ちが伝わってちょっとホロッとさせられます。
その気持ちがまた大人の心も溶かしていく様子は心地よいものがありました。

ワーニャを演じた少年も演技だと感じさせない自然さがあって、ドキュメンタリー感覚で観ました。


大感動の作品という宣伝ですけど、あまりそれを期待しない方がいいかも。
淡々とした中に、ロシアの国の様子がかいま見れたのは興味深いところでした。


ベルリン国際映画祭少年映画部門グランプリ

10/27からの公開です



★★★*☆