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映画ノート

サン・ピエールの生命(いのち)


1999年(フランス)監督:パトリス・ルコント出演:ジュリエット・ビノシュダニエル・オートゥイユエミール・クストリッツァ/ミシェル・デュショーソワ【ストーリー】1849年。カナダの仏領サン・ピエール島。駐留軍の隊長ジャンとその妻ポーリーヌは深い愛情で結ばれていた。ある日、島に流れついた漁師のニールが酔った勢いで殺人を犯す事件が発生、彼は死刑を宣告される。だが、島にギロチンが届くまでの間、ニールはポーリーヌの手伝いをすることに。粗野で無教養だが純朴で優しいニールを島の人々も次第に受け入れるようになる。しかし、ついにギロチンを乗せた船が島にやって来た。
■感想
カナダのフランス領サン・ピエール島で実際にあったお話を基に作られた映画です。

冒頭、なんだかユーモラスなムードと緊張感とを同時に醸し出しながら、起こってしまった殺人事件^^;
これルコント・マジックでしょうか。

で、この事件でギロチン刑に処されることになった漁師ニール。
ところが、島にはギロチンがない! ということで、フランスからはるばるギロチンを取り寄せることになります。

その間、ニールの身柄は駐留軍の隊長ジャンが預かることになりますが、
ジャンの妻、ポーリーヌの意向で、花の世話や、村人の屋根の修復などの仕事をしながら時を待つことに。

隊長ジャンにダニエル・オートゥイユ、妻ポーリーヌにジュリエット・ビノシュ
死刑囚ニールにはエミール・クストリッツァ



とにかく驚きなのがジャンの妻への愛情。
「人は変わることができるのだから」という信念のもとニールと接する妻ポーリーヌをひたすら愛しているのです。
次第にポーリーヌの中に囚人ニールに対し、同情や母性以上のものが生まれていることもかすかに感じながら、しかも妻の行動が自らの立場を危険にさらすこともわかっていながらも全てを受け入れる愛。

これね、ルコントじゃなかったら、「あり得ね~!」(いつもこれで、すまん^^;)です。
でも、ルコントだからこそ、こんな形の愛もあるんだ。。って思ってしまうのですよ。

ジャンを演じたダニエル・オートゥイユの憂いを秘めた表情が切なく、その刹那的な愛に胸が締めつけられる思いでした。

悲劇的なラストも衝撃的です。


公開時のタイトルは「サン・ピエールの生命(いのち)」ですが、ビデオのタイトルは「サン・ピエールの未亡人」となっているようです。

英語字幕で、途中何度も使われる「Widow(未亡人)」という単語に最初「?」になってたんですが、
「Widow」にはギロチンという意味もあるんですって。
原題もそうですが、二つの意味を掛け合わせたタイトルなんですね。

ビノシュは、ちょっと微妙だな。美しかったですが、慈悲深いのか、バカなのか。。
とにかく夫の立場も考えなきゃって思ってしまったし、ジャンが命がけで愛す価値があるのかとも思うのですけど。。
勿論愛に価値もへったくれもないですけどね。


囚人ニールも、もっと奇麗な役者さんならいいのにって思ってしまったんですよね。
最初ジョンCライリーかと思ったし^^;
でもこのエミール・クストリッツァって、「黒猫・白猫」などの作品で知られる監督さんで、
世界の映画祭で受賞経験を持つ方なのですよね~。ビックリしました。
私は唯一「アンダーグラウンド」を観てますが、印象的な映画でした。


カナダ、サンピエール島の青い海と空、対照的にビノシュを捉える構図は絵画のようで、美しい映像が心に残る作品です。



★★★★☆