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映画ノート

グラン・トリノ


2008年(米)監督:クリント・イーストウッド出演:クリント・イーストウッド/コリー・ハードリクト/ブライアン・ヘイリー/ブライアン・ホウジェラルディン・ヒューズ/ドリーマ・ウォーカー/ビー・ヴァン【ストーリー】ウォルト・コワルスキーは朝鮮戦争兵役の経験を持つ老人。長年連れ添った妻を亡くし一人暮らしが始まった。ある日、隣に住むアジア系マイノリティー、モン族の一家の少年が愛車のグラントリノを盗もうとしたことから、彼らに深く関わることになる。
■感想
クリント・イーストウッドが監督・主演を努める新作です。

今回イーストウッドが演じるのは、朝鮮戦争を経験した老人ウォルト・コワルスキー。

今の若者の体たらくぶりも自分の家族のことも気に入らず、世の中の全て気に喰わないことだらけの偏屈じじい。
特に隣に住むアジア系移民モン族の家族のことが大嫌いのウォルトでしたが、ある日、隣の少年がギャングにそそのかされ愛車を盗もうとしたことをきっかけに少年と関わるようになります。
少年や、その家族と交流するうち、次第に自身の偏見や過去のトラウマにも対峙することになるのですが‥。



タイトルのグラン・トリノとは主人公ウォルトの愛車、72年型フォード、グラン・トリノのこと。
ピカピカに磨かれ倉庫に入れられたグラン・トリノは、自分の殻に閉じこもり、頑固一徹を貫き通すウォルト自身を象徴するものだったのでしょう。

オスカーの呼び声も高いイーストウッドの頑固ジジイぶりが最高。
気に入らないものは気に入らない。それを隠しもしない。しかもかなり口が悪い(笑)
イーストウッドがうーっとか、あーっとか苦虫を噛み潰したような顔で低く唸る毎に会場はクスクスと笑いに包まれます。

少年を除く移民家族は、アメリカに住むモン族の人たちを起用したそうですが、彼らの文化に触れるのも興味深いところ。
時にコミカルに描かれる彼らの暖かさや団結力は、ウォルトの家族との対比も効いています。

監督は偏見を捨てよということだけでなく、文明人が失いつつある人との繋がりを思い起こさせようとしたのでしょうね。

そしてイーストウッドからの最大のメッセージ。
それは、暴力を制すのは暴力ではないということ。

色んな伏線を貼られた中、ラストシーンは衝撃的で、誰もが言葉をなくしました。
エンドロールで、最初に流れる歌声はイーストウッド自身なのかな?(確かではないですが)

映画が終わり、みんなすすり泣きながら会場を後にする。こういう経験は初めてでしたね。

イーストウッドが国民に託したメッセージ、多くの人に届くといいなと思います。
『ブレイブ・ワン』の対極とも言える作品。
78歳のイーストウッド自らが主演を果たしたことに、大きな意義があると感じました。


日本公開は春かな?


★★★★*