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映画ノート

パリの灯は遠く

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バスターズと一緒にKill Nazis!6本目 『パリの灯は遠く』

1976年(フランス/イタリア)監督:ジョセフ・ロージー出演:アラン・ドロンジャンヌ・モローシュザンヌ・フロン/ミシェル・オーモン/マッシモ・ジロッティ   ピエール・ボイト/ジュリエット・ベルト/ミシェル・ロンズデール/フレッド・ペルソンヌ
■感想
今日はナチスユダヤ狩りに巻き込まれた男の悲劇を描いたサスペンスを。

 

1942年、ナチス占領下のパリ。
美術商のロバート・クライン(アラン・ドロン)の元を一人のユダヤ人男が訪ねる。
男の持参した絵画を、コインのみで買い上げるロバート。
男には他になす術がない。屈辱の表情を浮かべながらもコインを手にドアを出る男、見送るロバート。
ふと玄関の前に落ちている郵便物を手にする。・・・ユダヤ新聞
てっきりユダヤ人が落としたものと、男に差し出そうとするロバート。
しかしそれは確かにロバートに宛てられたものだった。

 

ユダヤ人でないロバートの元にユダヤ人のみに送付される新聞が届く。
同姓同名のユダヤ人と間違われた? 
この時代にそれがどれほど恐ろしいことかは想像できるというもの。

 

ロバートは自分がユダヤ人でないことの証明をすべく奔走すると同時に
自分と同姓同名のユダヤ人ロバート・クラインを探し出すことに執着していきます。
そしてとんでもないラストを迎えることになるんですね。

 

アラン・ドロンが演じたフランス人ロバートは、苦境にあるユダヤ人から美術品を安く買い取るというあこぎな商売を生業にする男。
その傲慢ぶりは冒頭のユダヤ人から絵画を買い付けるシーンだけでも十分に見て取れます。
そして、自分はフランス人であってユダヤ人でないと、何が何でも証明しようとするロバートの言葉の端々に、ユダヤ人を見下す姿勢が窺えるんですわ。
一方でロバートはそんな自分に後ろめたさを感じていたかもしれません。
それがその後の行動に繋がったのか。。

 

監督のジョセフ・ロージー赤狩りを経験をしてきた人らしく、差別される者の立場が分かるのでしょう。
冒頭のユダヤ人の怨念に満ちた目は監督自身の気持ちに通じるものかもしれません。

 

ラストは戦慄です。これはもうホラー。

 

途中「???」な部分があって混乱してしまうのだけど(しかも解決しないしw)
ユダヤ人狩りという史実を背景に、傲慢な男の身に降り掛かる運命をサスペンスフルに描いた面白い作品でした。アラン・ドロンも渋い。

 

絵を売りに来た男の顔をしっかり覚えていてね。



★★★★☆