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映画ノート

インビクタス/負けざるものたち

  愛を感じるクリスマス特集2本目 人類に愛を『インビクタス/負けざる者たち

2009年(米)監督:クリント・イーストウット出演:モーガン・フリーマンマット・デイモン
■感想
90年代の南アフリカ共和国を舞台に、ネルソン・マンデラ大統領が自国開催のワールドカップを通し
国をまとめあげる姿を描く、クリント・イーストウッド監督による実話ベースのドラマです。

 

ネルソン・マンデラと言えば、ご存知のように1994年に南アフリカ初めての黒人大統領となった方。
アパルトヘイト運動により反逆罪として逮捕され24年間の長きに渡り刑務所に収容されていながら
南アフリカに長く続いた人種差別と闘い続けた、不屈の精神の持ち主です。

 

この映画は、マンデラさんが大統領に就任した直後の南アフリカが舞台。
国民の多くからは大歓迎を受けながらも、大統領に対する、少数派である白人の思いは複雑。
長い間の歴史を思えば当然でしょう。

 

マンデラさんがまず一番にやろうとしたのは、国民の気持ちを融合させること。
彼はその手段としてラグビーワールドカップを選ぶわけです。
当時弱小だった南アフリカのチームが優勝すれば、国民はひとつになれる。
それはマンデラさんの長年の夢の実現でもありました。

 

当時のラグビーナショナルチームは白人ばかりで、黒人には遠い存在。
国際試合をしても黒人は外国チームを応援し、ナショナルチームを応援すれば黒人は友達に苛めにあうという状況。
そんなところをさりげなく見せるイーストウッドの演出は流石に上手いです。

 

ラグビーチームのキャプテンに自分の信念を伝え、翌年のワールドカップ優勝を
国策として第一に考えるマンデラ氏の考えは、当時の関係者には突拍子もないことに映ったことでしょうね。

 

でもマンデラ氏は正しかった。
国民が一体となっていく様子には感動します。


とにかくマンデラさんを演じたモーガン・フリーマンがいいですね。
アフリカ訛を駆使し、穏やかだけど、内に大きな信念を持ったマンデラを好演。
最初こそ背が高すぎるのが気になるものの、いつのまにかマンデラさんそのもののように見えてきます。
平和を願い、全人種の融和をはかろうとする姿には、モーガンさん自身の思いも重なるような気がしました。

 

後半はラグビーの試合が描かれ、スポーツものの世界に。
このあたり、イーストウッド作品にしては珍しいところですよね。
マンデラの言葉を受けたキャプテンマット・デイモンが、どうチームを率いたのか、
チーム内の変化があまり分からなかったのが残念なところだけど、スポ根もの特有の感情の高まりがあります。

 

音楽もアフリカの音楽をふんだんに使っているし、人と人の距離が縮まっていく様子を
ユーモアを交えた温かい描写で見えてくれるのはイーストウッドならでは。
時にはマンデラ氏に対抗する不穏な空気を漂わせ背景を臭わせているのもスリリングな味付けです。
どちらかというとベタな部分もあるので、やや批評家受けはしないかもだけど
すべての人間が誇りを持てる国を目指すマンデラさんの崇高な思いに感動。良い作品でした。

 

日本公開は2/5~

 

★★★★*