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映画ノート

灰とダイヤモンド


1957年(ポーランド)監督: アンジェイ・ワイダ 出演: ズビグニエフ・チブルスキー / エヴァ・クジジェフスカ/ バクラフ・ザストルジンスキー
■感想
今日は久々に「観るべきシリーズ」から。
ポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督が、第2次世界大戦末期のポーランドを背景に描く
一人の青年の物語。『世代』『地下水道』に続く戦争三部作の一本です。

ポーランドというのは本当に気の毒な国で、分割、消滅から復活したと思えば
第二次世界大戦ではナチスドイツ、ソ連の両方に侵略されまたまた分割。

ポーランド亡命政府は拠点をロンドンに移し、ドイツに抵抗するのですが、
本作の主人公の青年マチェクも戦争中はイギリスの反ドイツ組織に身を置き、
その後はソ連に抵抗するテロリストになっています。

冒頭、ソ連から来た共産地区委員長暗殺の指令を受け、
マチェク(ズビグニエフ・チブルスキー)と同士は標的2人を銃でぶっぱなす。
ところはそれは人違いだったことが分かり、マチェクは再び暗殺を決行することに。
時にホテルは終戦の祝賀の宴が催され、マチェクはバーの美しい女性に人目で恋に落ちる。。

ここで描かれるのはドイツの降伏直後の、ほんの二日ほどの出来事なのだけど
主人公マチェクとクリスティナの儚くも短いロマンス、
暗殺の対象であるソ連の共産地区委員長と生き別れになった息子のエピソードなども描かれ
戦争に翻弄された人々の生き様を追う群像劇的な味わいもあります。



色眼鏡をかけ、一見軽薄そうに見える主人公だけど
教会の地下墓地の墓標に刻まれたノルウィドの詩を暗誦するところや
クリスティナをナンパしながら、彼女が部屋に現れるとオタオタするところとか
観ていて段々に彼の本質が分かってくるんですよね。

それだけにラストは切ない余韻を残します。

タイトルの『灰とダイヤモンド
これは墓標に刻まれたポーランドの詩人ノルウィドの詩の一節「君は知らぬ、燃え尽きた灰の底に、ダイヤモンドがひそむことを」から来ているようです。
この時代、ダイヤモンドになりたくてもなりきれず、
多くの若者が志半ばで、時代に飲み込まれていったのでしょうね。

やりきれなさが残るものの、同士とバーでお酒の入ったグラスに火をともし、
死んでいった仲間を弔うシーン、殺害される委員長がマニチェクを抱きしめるような倒れみ
 ― 彼はアニチェクに息子の姿を重ねていたのかな
その後ろで祝賀の花火が打ちあがるシーン、バーで流れる哀愁を帯びた音楽、
ポスターにあるように、逆さにぶら下がったキリスト像など印象的なシーンも多く
悲しすぎるラストシーンの哀愁とも相俟って、
すべてがめちゃんこ好き!! そう思える作品でした。


★★★★*