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映画ノート

ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~


2009年(日本)監督:根岸吉太郎出演:松たか子浅野忠信室井滋伊武雅刀広末涼子妻夫木聡堤真一【ストーリー】戦後間もない混乱期の東京。小説家の大谷は才能に恵まれながらも、私生活では酒を飲み歩き、借金を重ね、おまけに浮気を繰り返す自堕落な男。放蕩を尽くしては健気な妻・佐知を困らせてばかりの日々。ある日、行きつけの飲み屋“椿屋”から大金を奪って逃げ出してしまった大谷。あやうく警察沙汰になりかけるが、佐知が働いて借金を返すことでどうにか収まる。
■感想
アカデミー特集に入る前に、もう一本機内鑑賞の感想を

太宰治の同名短編の映画化。
監督の根岸吉太郎モントリオール国際映画祭で最優秀監督賞を受賞しています。

才能がありながら自堕落な暮らしで身を持ち崩す小説家と夫を支える妻。
こんな愛の形もあるのだなぁと思わされる作品でした。

冒頭、つるべのわっかをくるっと回して、逆さに回転すれば地獄・・・
少年時代の大谷がそれを回すと、カラカラと音をたて2度とも逆さに回転する。
少年の将来に何が起こるのか、否が応でも惹き付けられました。掴みは最高。

小説家大谷に浅野忠信、妻佐知に松たか子

幼い頃のあのカラカラ以来、「地獄」の2文字に取り憑かれ
真っ当な道を歩むことは許されないとでも言うかのごとく。
酒を飲んでは借金を繰り返し、女と深い仲になり身を持ち崩す大谷。

そんな夫を支える妻を演じた松たか子は、佐知にピッタリ嵌ってました。
演技が上手いというよりも、彼女自体の本質に似てるような。
大人しく健気だけど、その実、柳のようにしなやかで
しかもどこかあっけらかんとしたユーモアさえ持ち合わせてるんですよね。
着物からのぞく生足の美しさに、女ながらドキっとしたしね(≧∀≦)

大谷にはそんな佐知が眩しすぎたのかもしれない。
でもついに佐知がある行動で身を堕とすとき、
それまで平行線状にしかなかった二人の絆が、ようやく重なり合ったんでしょうね。

何か、フランス映画を観終えた時のような(ってあんまり観てないけどw)余韻が残りました。
うん、良かったです。


★★★★☆