しまんちゅシネマ

映画ノート

歩いても 歩いても

 
地震から一週間、元気なものが普通に元気を出すことが応援になると信じ
映画の記事を再開しますね。
今月はスリラー大会だったんだけど、さすがにそういう気分じゃなくw
何から始めようかなぁと考え、日本人の家族の姿を描くこの作品にしました。
 
歩いても 歩いても 2007年(日本)
監督:是枝裕和
出演:阿部寛夏川結衣樹木希林原田芳雄/YOU/高橋和也/田中祥平
   寺島進加藤治子
 
■感想
阿部ちゃん演じる良多が兄の命日に田舎に帰省し
家族と過ごすさりげない(さりげなくもないか)2日間を描いた作品。
監督は『誰も知らない』の是枝監督だね。
 
良多(阿部寛)の奥さん(夏川結衣)は前の夫と死別してて子連れ再婚。
父親(原田芳雄)は町医者で、兄は生きていたらあとを継いでたんでしょうけど
良多は医者にはならず、家を離れている。
そんなわけで、良多にしてみると、帰省はちょっと腰が重いのね。
 
兄の命日に家族が集まり、みんなでご飯を食べてお墓参りをする
それだけのお話ではあるんだけど
さりげない描写から、それぞれの関係を描きあげ、時の流れを映し出す。
 
父子のやりとりや、嫁姑の会話もなかなかスリリングなところがあるけど
そんなシニカルな映画ではないのね。
兄がなんで死んだのかがだんだんに分かってくるにつけ
家族の色んな思いが見えてくる。

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映画の中で、樹木希林が良多に「死別の女房を貰うのは難しい。
死んだ夫には叶わないから」なんてことを言うシーンがあるけれど
それは良多と兄、父との関係においても言える事なんだと思う。
優秀だった兄が死んでしまったら、弟は兄を一生追い越すことはできない。
父の期待も、愛情も兄のもの
そんな思いが父との間に確執を作る。
 
でも 親も年取るんだよね。
お風呂場に取り付けられた手すりなど、さりげない見せ方で
老いた親を感じる瞬間を捉えているのもうまい。

「歩いても 歩いても」というタイトルの意味するところは、よく知らない。
でも、劇中、母親の思い出の曲「ブルーライト ヨコハマ」にあっと声が出たし、なんか泣けた。
 
学校帰りによく道で歌ってたなぁ・・
あ、歳がバレる(笑)
 
登場人物は誰も適役だったけど樹木希林って凄いね。
冒頭の包丁さばきだけで、きっちり家庭を守ってきた偉大な母親を感じさせる。

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良多とは血の繋がりのない子供(田中祥平)の存在によって
本来なら見せなかったであろう、親子の心の内側が透けて見えるのも面白いです。
 
二日くらいの帰省で、劇的に親子が心打ち解けあったりしないところがいいよね。
大きなことは何も起こらない。
だけど、時の流れによって、変わっていくこともある。
そんな感じがやけに心に響いて、心地よさが残る素敵な作品でした。
 
いつものテレビウィークの評価も星3つ半(4つで満点)とかなり高評価。
アメリカ人もこれ分かるんだ~と妙に感心しちゃった。