しまんちゅシネマ

映画ノート

夏の終止符


 
大映画祭特集 8本目
50年前の1961年の8/13に、ドイツはベルリンの壁によって東西に分けられたんですね。
ってことで、いきなりですがベルリン映画祭関連いきます。
 
まずは、ロシア発心理スリラー『夏の終止符
主演俳優二人に男優賞、撮影に対し芸術貢献賞と、それぞれに銀熊賞が与えられた2010年の作品です。
夏の終止符(2010)ロシア
監督・脚本:アレクセイ・ポポグレブスキー
出演:グレゴリー・ドブリギン/セルゲイ・プスケパリス
 
今週から始まった、大映画祭の上映作品のひとつですが、私はストリーミングで観ました。
 
舞台となるのは、ロシア領、北極圏の島。
ここでは、二人の男が放射能値観測のため駐留しています。
男の一人は、赴任7年の中年男セルゲイ(セルゲイ・プスケパリス)。
もう一人の学生上がりのパベル(グレゴリー・ドブリギン)は、片耳にピアス、
ヘッドフォンで音楽を聴き、ビデオゲームを楽しむ若者で、
彼は日本ではおなじみになってしまったガイガーカウンター器を使って放射線量を測り、
コンピューターにデータを入力するという仕事を担当しています。

昔ながらのアナログな仕事をこなすセルゲイには
今どきの若者であるパベルの存在は鼻持ちならないものらしく、
二人の間には微妙な不協和音が生じている様子。
 
ある日、セルゲイが鱒釣りに出かけている間、
留守を任せられたパベルはうっかりデータを取り損ねてしまいます。
その間、本部からセルゲイに悪い連絡が入ってしまうのですが
でっち上げの記録をセルゲイになじられたパベルは
メッセージを伝える機会を逸してしまうんですね。
 

 
いや~、面白い。こんな緊張させられる映画も久々です。
ちょっとしたことから、とんでもない不条理な事件に発展してしまうという点で
コーエン兄弟の作品に通じるものがあるかもです。
けどこれ、もっと、うんとシリアスで、ハラハラドキドキなシチュエーションが
これでもかの勢いでやってくるんですよね。
 

大体、この島に高い放射能を放出するアイソトープ製品(↑こんなの)が放置されてる理由も
彼らが駐在し、その値を観測している理由も説明されません。
しかもこの放射線が、とんでもない使われ方をする展開に驚愕します。
 
 
無線の相手となる「声」はあるものの、実際の登場人物は二人のみ。
にもかかわらず、すさまじいばかりの心理劇を展開させる脚本も、それに応える二人の演技も見事です。

世代や環境が違えば、ものの考え方も生き方も違う
だけど、ちょっと話し合えば分かり合えることも多いはず
なのに、ここまでこじれるとは・・・と、考えさせられます。
とことん不条理な展開ながら、人間は互いを許すこともできるという見せ方に
監督のメッセージも感じるところです。

流氷流れる海、荒涼とした島の光景も映画の主役。
BGM代わりとなる岩にあたって砕ける波の音と、海猫の鳴き声が耳に残ります。
 
ロシア作品恐るべしと感じた一本でした。お勧め!