しまんちゅシネマ

映画ノート

異色西部劇 『Meek's Cutoff (原題)』


エスタン祭り便乗 2本目

今日は『ウェンディ&ルーシー』のケリー・ライヒャルトが再びミシェル・ウィリアムズと組み
大陸を横断する幌馬車の旅を描く異色西部劇です。
 
Meek's Cutoff (2010) アメリ
監督:ケリー・ライヒャルト
出演:ミシェル・ウィリアムズポール・ダノウィル・パットン/シャーリー・ヘンンダーソン
ゾーイ・カザン/ブルース・グリーンウッド
 

    
1845年、西部開拓の時代
3組の家族が西を目指し幌馬車の旅に出る。
雇われガイドのミーク(ブルース・グリーンウッド)が近道(cutoff)を提案したことから、
一行は道しるべのついたオレゴントレイルを外れ、乾いた荒野をひた歩く。
しかし、行けども行けども、目的地が見えてこない。
水も底をつく頃、ようやく「道に迷ったらしい」と認めるミーク。憤る一行。
彼らは途中遭遇したインディアンを捕まえ、道案内に利用しようとするが・・


 
これは西部劇というより、開拓の時代を背景に描くサスペンス・・と言うべきかな。
イオニアたちは、こんな思いをして新天地を求めたんだということを思い知らされる映画です。
タイトルの意味は「ミークさんの近道(切り通し)」。
幌馬車の旅といっても、人は馬車に並んでひたすら歩くんですね。
殆ど台詞もない中、テクテクテクテク・・
疲れと渇きと飢えと、先の見えない不安と恐怖が
インディアンの行動ひとつにも疑心暗鬼を起こさせる。
一体誰を信じ、どう進んでいくべきなのか
登場人物それぞれに役割を持たせ、物事の受け止め方は個々で違うのだということを
繊細に描くところは女性監督ならではと感じるところ。
 

 
この映画、そのリアリティを追求した描写にはちょっと驚くものがあります。
登場人物の顔も手も服も気の毒なほど汚い。女優さんもほぼスッピン。
日中、女性陣はサンボネットを被っているんだけど、顔は影になって殆ど見えないとかね(笑)
キャディさんじゃあるまいし、普通なら女優さん怒るでしょ。
あと、極めつけは夜のシーン、ランプの灯以外殆ど見えないほどに真っ暗(笑)
あぁ、昔はこんな暗闇の中、夜をやり過ごしたんだと、その心細さも追体験させられるわけだけど
映像的にはNGとも思えるほどで、これやるのは、勇気がいったんじゃないだろか。
 
劇中、最も緊張するのは、ミシェルが銃を構えるポスターのシーン。あ、そう、ミシェルですよw
混沌とした時代を生き延びるには
信じるべきものを見極める力も必要なんだと考えさせられます。
だけど、彼らの選択が正しかったのかでさえ、映画は明確な答えを提示しません。
 
私としては、ミシェルの行動が道を拓いたと感じ、最後は胸に迫るものがあったのだけど
受け取り方はぞれぞれでしょうね。
「これだけ?」「だからなんだったの?」そんな声も聞こえてきそうです。