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映画ノート

すべて彼女のために


 
今日はスリリングなヒューマン・サスペンス『すべて彼女のために
フレッド・カヴァイエ監督によるフランス映画です。
すべて彼女のために (2008) フランス
監督:フレッド・カヴァイエ
出演:ヴァンサン・ランドン/ダイアン・クルーガー/ランスロ・ロッシュ/オリヴィエ・マルシャル/アンムー・ガライア
 
幸せ夫婦のジュリアン(ヴァンサン・ランドル)と妻リザ(ダイアン・クルーガー)。
ある朝、突然警官が押し入り、妻を殺人の容疑で逮捕してしまう。
泣き叫ぶ幼い息子。
不利な証拠が重なり、どうしても無罪を証明することができないまま3年が経ち
ついに刑が確定しようとしていた。
絶望する妻を救う手段は・・・
 
 
愛する妻を冤罪から救うために、妻を脱獄させる計画を実行しようとする男の話です。
 
ラッセル・クロウ主演のハリウッドリメイク『スリーデイズ』を先に観ての鑑賞ですが
こうして観るとハリウッド版はかなり忠実にリメイクしてますね。
ハリウッド映画らしく後半の展開をよりスリリングに描くことには成功していましたが
オリジナル版は、枝葉を除いて実にシンプル。
それなのに、こちらの方により感情移入し、引き込まれるのはなぜでしょう。
 

まず、登場人物の魅力でしょうね。
妻を100%信じ、妻を愛する夫の気持ちがひしひしと伝わる。
朝のさりげないひと時に、病院のベッドに横たわる妻を見つめる瞳に・・
会話は要りません。
強く見えるけど実は脆いところのあるクルーガーも、
夫が命をかけてでも救いたいと思わせるのに説得力あり。綺麗だしね~。
ヴァンサン・ランドルのしわの刻まれたお顔から、
妻を救うためならどんなこともいとわないという信念が感じられ
私たちは、ハラハラしながらも見守るしかないですもん。
 
『スリーデイズ』では、そこに愛を感じられず夫の行動に説得力がなかった。
そんなことまでする?と つい思っちゃたもんな。
また、ハリウッド版は、途中までは妻の殺人を疑わせ、観客を惑わせるものだったけど
こちらは最初から妻の冤罪が分かるつくりだったのも共感につながったかもしれません。
銃を構えるラッソーさんが、どうしても素人に見えないのもマイナスでした。
 
子供とクルーガーが車の中で抱き合う瞬間や、
確執のあった父親とジュリアンが最後に抱きあう瞬間などヒューマンな描き方もよし。
フランスの警察は優秀だと感じる、警察との攻防もいいですね。
 
ということで、個人的には『すべて彼女のために』のタイトルがしっくりといくオリジナル版に軍配。
ただ、どうしても先が読めているというのはドキドキ感を減らすものでして
できればこちらを先に観たかったというのが正直なところです。