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映画ノート

星の旅人たち

マーティン・シーンミリオ・エステヴェスの父子が、『THE WAR 戦場の記憶』以来
実に15年ぶりに父子役で共演を果たした本作は
息子の果たせなかった巡礼の旅を決行する父親の姿を描くヒューマンドラマです。



星の旅人たち
2010年(アメリカ/スペイン)
原題:The Way
監督:エミリオ・エステヴェス
出演:
マーティン・シーンエミリオ・エステヴェスデボラ・カーラ・アンガーヨリック・バン・バーヘニンゲンジェームズ・ネスビットチェッキー・カリョ

【ストーリー】
マーティン・シーン演じる眼科医のトムに、
息子ダニエル(エミリオ・エステベス)の訃報が入る。
巡礼の途中で命を落とした息子に代わり
トムはサンディエゴ・デポステーラへ巡礼の旅に出ることを決める。


本作はエミリオの息子とマーティンが、8年前、スペインに巡礼の旅に出ようとして
準備不足から断念したことからインスピレーションを得た作品だそうです。




シーン演じるトムは、分かり合うことのできないまま
息子ダニエル(エステヴェス)を亡くし、深く傷ついている。
息子は巡礼の旅に何を求めたのだろう。。
遺体の確認に現地に赴いたトムは、ダニエルに代わり
旅を完結させることを決め、バックパックを背負った。






途中出会ったワケあり男女3名と行動をともにしながらの珍道中。
最初はすれ違い、ストレスを感じていたトムが
徐々に彼らを理解し価値観を変えていく
You don't chose a life ,you live one.は、最後に会話したとき
ダニエルがトムに言った言葉。
自然の中に身を置き、ひたすら歩を進めることで、
トムは自分の価値観のなんとたわいのないものであったかに気づきます。
それはダニエルの導きでもあったのでしょう。
イントゥ・ザ・ワイルド』にも通じるところです。

巡礼者の寝泊りする宿や巡礼の途中で出会う異国の人々に
それぞれの文化を見せたり、外国人から見るアメリカ人の描き方に
ユーモアを交えた作りにも、監督のセンスを感じます。
最後にたどり着く寺院での宗教の儀式の荘厳さには
鳥肌がたつほどに感動し、ひたすら涙でした。

死んでしまった息子と心を通わせる・・というのはおかしな表現だけど
『THE WAR~』の最後があまりに辛かったこともあり
本作で人として成長していく父を、温かく見守るエステヴェスの姿に一層泣けるんですよね。
エステヴェスは父に最高のキャリアを与え、父はその期待に見事にこたえた。
父子で作り上げた最高の作品ですね。

人は誰も完全ではないけれど、努力すれば少し高いところを目指すことができる
そんなメッセージの込められた優しい作品です。
美しい音楽、異国情緒溢れる風景にも癒されますよ。

日本公開は6/3~     
      *旧ブログの記事に加筆しています。


★★★★☆