しまんちゅシネマ

映画ノート

プロポジション 血の誓約

プロメテウス』のキーワードから、出演者の出演作を観るシリーズ
今日はピーター・ウィーランド役のガイ・ピアースの出演作から一本。
19世紀、開拓時代のオーストラリアを舞台にした、異色バイオレンス西部劇です。



プロ
ポジション 血の誓約
2005年(オーストラリア/イギリス)
原題:The Proposition
監督:ジョン・ヒルコート
出演:ガイ・ピアースレイ・ウィンストンエミリー・ワトソンダニー・ヒューストンノア・テイラー


この映画の背景となるのは、全土をイギリスにより植民地化された19世紀のオーストラリア。
移民たちは原住民を迫害し、土地を搾取。
そんな殺伐とした時代、荒くれ者のバーンズ3兄弟は、様々な悪事を重ねていた様子。
ま、「様子」というのも、その辺の描写はまるでなく、
映画はいきなり、激しい銃撃戦で始まり、いきなり危険な世界に引きずり込まれます。
捕まったのは、バーンズ兄弟の次男と三男。
警官隊隊長のスタンリー(レイ・ウィンストン)に、9日以内に長男を探し殺さなければ三男マイクを縛り首にすると言い渡され(プロポジション)、
次男チャーリーは、困惑の中、一人砂漠へと旅立つのでした。



残忍さと自然の美しさが相俟って、不思議と詩的な印象を受ける作品です。
兄を殺さなければ、弟が処刑される。
究極の選択を迫られる次男チャーリーを演じるガイ・ピアース
いわば歴史の目撃者と言ったところでしょうか。
兄とともに蛮行を行ってはいたものの、もはや兄とは距離を置いてしまった男。
弟の命を守りたい、その当たり前のことが
兄の命と引き換えでなければならない時代を生きる男の哀愁が滲み出ます。

それは警官所長のスタンリーも同じことで
妻を守り、法や秩序を守りたいのに、それが許されない男の苦悩を滲ませます。
スタンリーの妻にエミリー・ワトソン
砂漠に不似合いなドレス、美しいティーセットでお茶を楽しむ彼女には
イギリスの影が付きまといます。
スタンリーにとっての癒しでありながら、同時に夫を苦悩に導く存在なのが印象的。
決定的な事件が、真夏のクリスマスに起こるのも
相容れない文化の象徴のように思えます。




監督は『ザ・ロード』で灰色に包まれた終末の世界を描いたジョン・ヒルコート
今回作品を色でたとえるなら、乾いた砂と、夕焼け空のオレンジ色。




台詞も少なく、バイオレンスの狭間に挿入される大自然の映像は詩的ですらあり
こんなにも美しい土地で、人間は何をしてるんだろう。
そう思わせるラストシーンが心に残る作品でした。

★★★★