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映画ノート

大人の見る絵本 生まれてはみたけれど

タイトルの「大人の見る絵本」で妄想に走ったあなた残念でした。
今日は小津作品なんですよ。
大人の見る絵本 生まれてはみたけれど(1932)日本
監督:小津安二郎
出演:斎藤達雄、 吉川満子、 菅原秀雄、 突貫小僧、 坂本武、 早見照代 、 加藤清一日本
公開:1932/6
郊外に越してきた吉井家幼い二人の兄弟にとって父親は世界で一番偉い人。
しかしある日、会社で上司にペコペコし変顔までする父親の映った8ミリビデオを見てしまい・・・。


小津安二郎監督によるサイレント映画です。
トーキーの黎明期の32年に、あえてサイレントにこだわり、その完成形を目指したというだけあって
本作のクオリティの高さと面白さに驚きました。

大人の世界の一端を知りショックを受ける兄弟と子供たちを導く両親の普遍的な関係を描いているのですが
30年代という時代のほのぼの感もあいまって、アイロニカルなだけでなく実に優しく可愛らしい映画になってるんですね。
子供たちの日常の描写もユーモアたっぷりでチャップリン映画を観てるよう。
それが日本だから余計微笑ましいんですよね。

子供たちの中には、背中にこんな貼り紙をしてる子供もいてねw

おかしいやら可愛いやら今時の子供は、いくらこの年齢でも嫌がるでしょ。
親の権力がまだ絶対だった頃なんでしょね。

体の大きな、ジャイアン的存在の子供はいつもうずら卵を食べてる。卵は強さの源?
スタローンはきっとこの映画を観て『ロッキー』に応用したんでしょうね(笑)
あと、うずら卵が賄賂みたいな役割をしたりして
子供の間にも、偽大人社会が存在するという描き方も面白い。
子供に現実を教えることは、親にとって時にとても切ないこともあるでしょう。
それでも父は厳しく、母は一歩引いて、でも優しく、ともに子供に向き合うんですね。

現代人が失いつつある家族の形がそこにありました。
ありふれた日常を切り取っただけかもしれないけれど日本人の原点みたいなのをいっぱい感じた作品でした。