しまんちゅシネマ

映画ノート

長距離ランナーの孤独




10月10日(過ぎましたw)は体育の日・・ではなくなったんですが
スポーツの秋到来ということで、ここからは「走りが印象的な作品」を何本か。
まずは『長距離ランナーの孤独
長距離ランナーの孤独(1962)イギリス
原題:The Loneliness of the Long-Distance Runner
監督:トニー・リチャードソン
出演:トム・コートネイ 、 マイケル・レッドグレーヴ、 ピーター・マッデン、 ウィリアム・フォックス、
トプシー・ジェーン、 ジュリア・フォスター
盗みを働き 感化院へ送り込まれたコーリン(トム・コートネイ)は逃げ足の速さをかわれ、長距離競争の選手に抜擢された。練習を重ね、大会の当日トップで姿を現すコーリンだったが・・


主人公のコーリンは、感化院で走りの才能を開花させる。
優勝すれば人生を変えることもできる。
描き方によっては、非行少年の再生を描くスポ根ものにもなるのだけど
本作はスポ根モノとは180度違う方向へと帰着します。

練習のため院外に出ることを許され、ひと時の開放感に浸りながらひた走る
自然の中走る映像と音楽が美しい



しかし彼の脳裏には18年間の惨めな人生がフラッシュバックされ、
彼の虚無感とぶつけようのない怒りが浮かび上がるのです。
盗みを働き、刑事にまとわりつかれるコーリン
隠した金が見つかるシーンはアラン・ドロンの『地下室のメロディ』を彷彿とさせます。


有名な作品でもあるので、ネタバレしますが・・・
         
           



(未見の方はご注意下さい)
大会当日彼はトップを走りながら、ゴール直前で失速するんですね。

感化院から優勝者が出れば院長の手柄になる それも許せない
自分は何のために走るのか・・?
トム・コートネイ の不敵な表情が目に焼きつきます。

監督のトニー・リチャードソンは“怒れる若者たち”の先導者とのこと。
イギリス作品ではあるけれど、アメリカンニューシネマに通じる
体制への反抗を強く描く作品だろうと思います。
60年代は世界的に若者の怒りの爆発する時代だったんでしょうね。

ハッとするのは感化院の院生たちが作っているものを映し出すラストシーン
毒ガスマスク・・ですよね。


ベトナム戦争に反対し過激派となった元若者の逃亡を描いた、
ロバート・レッドフォードの新作『ランナウェイ/逃亡者』とセットで観るのがいいかも。