しまんちゅシネマ

映画ノート

熱波




ヨーロッパ映画を続けて観ています。
今日はポルトガルミゲル・ゴメス監督による喪失のラブストーリー『熱波』を。
熱波(2012)ポルトガル/ブラジル/フランス
原題:Tabu
監督:ミゲル・ゴメス
出演:テレーザ・マドルーガ/ラウラ・ソヴェラル/アナ・モレイラ/カルロト・コッタ
日本公開:2013/7/13 
敬虔なクリスチャンであるピラールは高齢な隣人アウロラを気にかけている。もともとエキセントリックなアウロラだったが、最近ではおかしな言動が目立つようになった。ある日死期が近づいたアウロラは、最期に会いたい人がいることを告げる・・。




死を間近にしたアウロラが「一目逢いたい」と願ったのは、
若き日に植民地時代のアフリカで出会ったベントゥーラという男でした。
アウロラの現在を描く前半を「楽園の喪失」、アフリカでの熱愛を描く後半を「楽園」という、二部の章で構成された本作は、全編モノクロ、しかも「楽園」の章はベントゥーラのボイスオーバーの形をとり、登場人物には台詞がありません。
それでもオールディーズ系のバンド音楽や、アフリカの民族音楽、繊細なピアノ曲が若き二人の禁断の恋を盛り立て、胸の高鳴りを覚えるものになってるんですよ。

しかし、それだけに、対照的な「楽園の喪失」の虚無感が際立つことになるわけで・・。
正直、前半アウロラが語る突拍子もないたわごと(と思われた話)を延々と聞く(というか字幕を読む)のは、忍耐が要ったのだけど、それらがアフリカ時代の思い出にリンクしていたことに気づくとき、彼女の喪失の大きさを思わずにいられませんでした。
「楽園」と「楽園の喪失」ということで対比させたのは勿論恋の輝きでしょうが
植民地アフリカで農園を持ち、華やかに生きた人々の人生も時代とともに変化したのでしょうね。





音楽の使い方が絶妙で、アフリカの光景含め、ノスタルジックな映像が美しかった。
アウロラの余生は寂しいものだったけれど、50年間封じ込めた想いをようやく解き放った彼女の心には安らぎがあったと信じたい。

それにしても若きベントゥーラを演じたカルロト・コッタがジョニー・デップに見えて仕方なかった。