しまんちゅシネマ

映画ノート

マイノリティ・リポート




二月になりました。
今月もオスカー関連作品を観ていきますが、長丁場でもあるので、ここらで小休止。
二月は逃げるとも言うので、「逃げる映画」を特集します。
脱走、逃走、逃避行ものなどを観ていきますね。

まずはトム・クルーズ主演、スピルバーグの2002年製作のSF『マイノリティ・リポート』です。
マイノリティ・リポート(2002)アメリ
原題:Minority Report
監督:スティーヴン・スピルバーグ
出演:トム・クルーズコリン・ファレルサマンサ・モートンマックス・フォン・シドーロイス・スミスピーター・ストーメア/ ティム・ブレイク・ネルソン/ スティーヴ・ハリス/ キャスリン・モリス

2054年のワシントンDC
ここでは犯罪予防局なる政府機関により、犯罪が未然に防がれている。
3人の予知能力者の予知したビジョンを映像化し、殺人が起きる前に犯罪者を逮捕してしまうというのだ。
ところがある日、犯罪予防局のチーフ ジョン(トム・クルーズ)は、操作中のビジョンに、36時間後に自分が見知らぬ男を殺すシーンを見てしまう。一転して追われる立場になったジョンは、容疑を晴らすべく奔走することになるが・・・。


フィリップ・K・ディックの原作をスピルバーグが映画化、しかもトム・クルーズ主演とくれば、面白くないわけないですね。
まず近未来映像が素晴らしい。
タッチパネルスクリーンやメモリー装置など、アイディア的には既に実用化してることがいち早く描かれていることにも驚きます。
しかし、この予防局なる機関が、機械ではなく予知能力者の予知という妙にアナログなものに依存しているところは面白いところ。
予知能力者とはいえ人間ですから。その予知ビジョンは必ずしも完璧ではないはず。
そこに「マイノリティ・リポート」なる穴を見出し、真相に迫っていく様子がミステリー的な面白さも生み出していて秀逸でした。

しかしスピルバーグは本当に凄いですわ。
ジョンの逃走シーンに描かれる未来社会の映像にはワクワク。
予知能力者アガサ(サマンサ・モートン)の予知をうまく使いながら追っ手を振り切る演出も見事です。
場末の医師( ピーター・ストーメア)に笑いを伴う麻酔をかけられ、笑いたくもないのに笑うトムちんにも笑えたし、スパイダーと呼ばれる捜索ミニロボットに見つかりそうになるシーンには『ジュラシックパーク』を髣髴とさせる緊張があり、どこをとってもエンタメ性抜群でした。




登場人物の仕事にかける、それぞれの心情の描き方もいいんですよね。
予防局の長 マックス・フォン・シドー、局を捜査する刑事のコリン・ファレルもグッジョブ。
トムちんの子供への思いも丁寧に描かれ、それをミステリーに繋げているところもうまい。
アクションもこなすトム・クルーズのスター性を改めて確認することにもなりました。

「殺人を犯す予定だから逮捕!」って言われてもちょっと納得できないよねぇ。
その瞬間に思いとどまることもあるでしょうし。
というわけで、科学の発達の影に潜む矛盾や危険を描いている点で、往年のSFらしい作品。
最近ではやたら世界の終わりを描くものが多いけれど、スピルバーグにはやはり、こういうワクワクするような未来世界を描くことを期待したいです。