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映画ノート

【映画】 ビューティフル・ボーイ/Beautiful Boy(原題)






Beautiful Boy(原題)(2010)アメリ
原題:Beautiful Boy
監督: Shawn Ku
出演:マイケル・シーンマリア・ベロ/カイル・ガルナー/アラン・テュディック他


ストーリー

ビルとケイトは夫婦だがその関係は冷え切っていた。大学に進学した一人息子のサミーから久々に電話があった翌日、サミーは大学で銃を乱射し、教授やクラスメート17人を射殺した後、自らも命を絶った。。





銃撃事件を犯した子供の両親の苦悩と、息子の死を受容する過程を描くヒューマンドラマです。
無名の監督さんの、日本ではまだソフト化もされていない作品ですが、心を動かされました。

夫ビルににマイケル・シーン、妻ケイトにマリア・ベロ
もはや食卓で夕食を共にすることもないほど夫婦の仲は冷え、離婚の危機を迎えています。
そんな彼らに突然訪れた息子(カイル・ガルナー)の死。しかも彼は17人の命を奪ってしまった。
二人は悲しみに暮れるまもなく、銃撃犯の親として世間の目にさらされることになるのです。


監督はもともと振付師や、ブロードウェイのダンサーを生業とする方だったようですが、2009年のヴァージニア工科大学の銃撃事件が両親の学校であったことや、
事件の数ヶ月前に、自分の自宅で親友が予期せぬ死を遂げたことなどがきっかけとなってこの映画を作ろうと思ったんだとか。

驚くのはその繊細な心理描写。
子供の死を受容する過程において、親の責任から逃避し、息子の存在そのものを否認してみたり、それでも徐々に子供が本当に求めていたものはと考えるようになる心の移り変わりがとても丁寧。
若い監督がこれほどリアルな描写ができたのは、死んだ友達の両親をたびたび訪れたことも助けになってるようです。

事件後初めて仕事に出た夫ビルを捉えるシーンでは
ドアの隙間から様子を窺う同僚の好奇の目を思わせたり
カメラに人格を持たせたカメラワークも秀逸。

壊れかけた夫婦がぶつかり、内心を吐露しあい、初めて本当の夫婦、両親になっていく様子は感動的ですらあり、夫婦を演じたマイケル・シーンマリア・ベロの熱演も光りました。

痛々しい物語でもありますが、
人はその関係を修復し前に向かって歩いていくこともできるのだという描き方はやさしく、見ごたえのあるドラマでした。


2010年のトロント国際映画祭国際批評家連盟賞( DISCOVERY部門)を受賞