しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】 夜と霧



日本では早くも真夏日を記録したり、もう入梅したところもあるようですね。
蒸し暑い季節をやり過ごすには映画で背筋を冷やすのもよろしいかと。
しばし涼しくなる映画をお届けしますね。






夜と霧(1955)フランス
原題:NUIT ET BROUILLARD
監督:アラン・レネ
ナレーション:ミシェル・ブーケ

ナチスユダヤ人虐殺を主題にしたアラン・レネ監督によるドキュメンタリー。
テレビで監督の作品を特集していて観ました。

冒頭 映し出されるのは、映画製作当時に撮影されたアウシュビッツ強制収容所の映像です。
これまでいくつかアウシュビッツを舞台にした映画を観てきて、外観はそれらとよく似ているのに、本物の迫力というのか
廃墟と化した施設を映すくすんだカラー映像から漂うただならぬ気配に なにか寒いものが走ってしまいました。

一般的なドキュメンタリーのように誰かの話を聞いたり、何かを検証するというものではなく、ここで何が起きたのかを詩的ともいえるナレーションとともにひたすら映し出す作品です。
しかし、これがもう完全にトラウマもの。
ブルドーザーで積み重ねられた死体の山、無造作に桶に集められた頭(!)など
どんなホラー映画も、おぞましさにおいてこれを超えるものはないでしょう。
そして何が怖いって、人間が本当にこんなことをしたとのだという事実。

 ホロコーストという言葉は、元はユダヤ教の「犠牲」を意図する宗教的な言葉らしく、ユダヤ人の大虐殺のことをホロコーストと呼ぶのは、ユダヤ人を神に捧げる意味合いとなりユダヤ人を侮辱することになるという説もあるようで、これを使っていいのかどうか迷うところですが、あえて使わせてもらうとして、、
先日観た『レイル・ウェイ 運命の旅路』のIMDbのメッセージボードのコメントに
日本人はこのホロコーストをどう受け止めているのかという書き込みがあって
ホロコーストユダヤ人虐殺を意味するだけの言葉ではないという事実にいまさらながらハッとしたんですよね。





歴史の中で過ちを犯してきたのはドイツ人だけではない
一歩間違えば、私たちは悪魔になりえるのだということ
だからこそ、二度と同じ過ちを犯さないために何をすべきかを考えなければいけない
監督がこの映画で訴えたかったことはそういうことだと思います。





32分という短い作品で、ユダヤ人虐殺野すべてを語るものではないけれど、まだ自分たちの運命を知ることもなかった人々がやせこけやがて、死体となって転がる その推移を見るだけでも意味があると思ったしだい。



◆記事リンクありがとうございます!

夜と霧 - CINEmaCITTA' - Yahoo!ブログ どんなに素晴らしい "反戦映画" でさえ、このわずか30分足らずのドキュメンタリー・フィルムの前では沈黙するしかないでしょう。