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映画ノート

【ドキュメンタリー】 The Lady in Number 6(原題)




The Lady in Number 6: Music Saved My Life(2013)カナダ/アメリカ/イギリス
原題:The Lady in Number 6: Music Saved My Life
監督:マルコム・クラーク
出演:アリス・ヘルツ・ゾマー他
日本公開:
今年のアカデミー賞 短編ドキュメンタリー賞を受賞した作品です。

主人公は「6号室」で毎日軽やかにピアノを奏でる109歳(!)のアリス・ヘルツ・ゾマーおばあちゃん。
それだけでも十分凄いんだけど、なんと彼女はナチスドイツによるユダヤ人迫害で強制収容所に収容された経験を持つ方。最高齢のホロコースト生存者だったんですね。

残念ながら今年2月に110歳でお亡くなりになってますが、本作は撮影時109歳のアリスおばあちゃんが、音楽とともに生きた彼女の人生を語ってくれています。
なんたって一世紀以上を生きた方ですから、重みが違います。
話の中にマーラーカフカといった歴史的な人物がお母さんの友人として登場したり、収容所での経験を語るときもメンゲラ博士の話なんかが出てくるわけだからまさに生き証人ですよ。



 
でもおばあちゃんが魅力的なのは、何よりもそのポジティブな生き方にあります。
幼い頃からピアノに親しみ、音楽が我が人生と声を大にする彼女は、強制収容所で過ごした日々さえもポジティブに捉えている。実際収容所では音楽家たちは演奏隊で演奏することを許され、ガス室行きを免れた人も多かった様子。アリスおばあちゃんも音楽が彼女を救ってくれたことに感謝し、同時に自分のピアノが収容者やドイツの将校たちをも癒したことに意義を感じているんですね。

「物事には良い面、悪い面があるけれど、私は良い面を見ることにしているの。
すべてのものは美しい、悪いことでさえ美しい。」

最愛の息子が64歳で急死したことについても、
「彼は明日自分が死ぬことさえ知らず、恐れも苦しみもないままに天に召された。神に何百回も感謝したわ」と語るおばあちゃん。
そんな見方もあるんだと驚くと同時に、考え方次第で人生はまるで違うものになるんだと気づかされます。

力強さの秘訣は好きなことをとことん追求し、笑いを忘れず、物事の良い面を見ること。
おばあちゃんのようにチャーミングに生きたい。
人生を変える一本かもです。