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映画ノート

【映画】『トランストリップ』”シッチェス映画祭






シッチェス映画祭特集 2本目
今日はシッチェス映画祭でジュノー・テンプルが女優賞を獲得したサイコスリラー。
“シッチェス映画祭”ファンタスティック・セレクション2014で上映が予定されてます。
トランストリップ(2013)チリ/アメリ
原題:Magic Magic
監督:セバスティアン・シルバ
出演:ジュノー・テンプルエミリー・ブラウニング/マイケル・セナ/アウガスティン・シルバ/カタリーナ・サンディノ・モレノ  
 日本公開:2014/10
 
アリシアジュノー・テンプル)はいとこで親友のサラ(エミリー・ブラウニング)と南米チリに旅行に出かける。しかしサラが用事で一時別行動をとることになり、アリシアはチリの孤島のコテージでサラの恋人オーガスティンとその友人ブリンク、オーガスティンの姉妹のバーバラと不安な時間を過ごすはめに・・




  見知らぬ土地で不安に過ごすヒロインが次第に精神のバランスを崩していくサイコロジカル・スリラーです。
アリシアジュノー・テンプル)には実は精神疾患の既往があり、様々なストレスが彼女の病気のトリガーになります。




 その一番の要因になるのが、マイケル・セラ君演じるブリンクの存在。
こいつがやたらアリシアの神経を逆なでしてくる。
冒頭の顔を見せないダンスシーンからも、その手の動きのしなやかさに彼がゲイであることが窺えます。そして彼の視線の向こうにはオーガスティン(オーガスティン・シルバ)。
おそらくはオーガスティンをひそかに愛するブリンクは、適わぬ恋の恨みをおどおどして弱そうなアリシアに向けたんでしょう。邪悪な表情を見せるこんなセラを見たことなかったのでびっくり。
私の頭の中で彼はまだ『JUNO』の黄色パンツ少年のイメージだったのに(汗)






 しかし彼とて根っからの悪者ではないのです。
この映画で怖いのは、普通の人たちが思わぬ罪を犯してしまうということ。
思えばサラもバーバラもオーガスティンも、みんな少しだけ悪いところがあって、サラのストレスを引き起こしている。でもその誰もが映画で起きることが自分のせいとは思わないであろうレベル。




 アリシアを演じるジュノー・テンプリはフリードキンの珍作『キラー・スナイパー』でマシュー・マコノヒーが興味を持つ少女を演じてましたが、彼女はこういう少し頭の弱そうな危うい役が嵌ります。
ジュノーだけでなくキャストの演技はみな秀逸。
監督の演出がいいのでしょうね。
ただし、この映画、動物愛護に反するシーンが出てきたり、邪悪で卑猥な箇所があるので
低評価を下す人が多いのかも。
それでも精神のアンバランスをきたすヒロインを中心としたサイコロジカルスリラーとして見ごたえ十分。
終盤、彼らが見知らぬ土地のカルチャーに翻弄されるのも怖いものがあります。
誰もが利己的な視点からのみ物事を捉えた結果、ヒロインに起きることにもぞっとしました。