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映画ノート

【映画】恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ




恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ(1989)アメリ
原題:The Fabulous Baker Boys
監督:スティーヴ・クローヴス

作品情報
あらすじ
風采の上がらないジャズ・ピアニスト・コンビが、起死回生に美人シンガー、スージーを迎え、やがて人気を博していくが・・・
トレーラー
恋のゆくえ ファビュラス・ベイカーボーイズ [DVD]


感想
80年代特集、最後の作品は1989年制作の『恋のゆくえ/ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』。
ジェフ&ボーのブリッジズ兄弟とミシェル・ファイファーを主演に、それぞれの葛藤やホロ苦い恋の行方を描くドラマです。

まず特筆すべきは吹き替え無しにシンガーを演じたミシェル・ファイファーでしょうか。
兄弟に発掘されたスージー(ミシェル)は、ステージに立つとどんどん輝いていく。



赤いドレスに身を包みピアノ上で歌うミシェルの魅力的なこと。
背景の詳細は明かされないものの、身を売ることで暮らしを繋いできたスージーは、誰よりも現実的で上昇志向のある女性。
そんなスージーには、夢を置き去りに、そこに留まる兄弟は負け犬同然に映ったのかもしれません。3人の関係はやがて壊れ、それぞれに苦い現実をたたきつけることになります。
兄弟に運をもたらしたかに見えたスージーがデュオの存続に危機をもたらすのは皮肉に思えます。でも彼女は兄弟の人生に新たな道を開かせるという役割を担っているという見せ方が上手い。

監督は『ハリポタ』シリーズの脚本を手がけたスティーヴ・クローヴス
29歳でこの脚本を書いたというのだから凄いですね。
兄弟のステージがいかにマンネリかを見せ、弟ジャックの苦悩を浮き彫りにする構成と演出は秀逸。だからこそ、抜け殻みたいになっていたジャックが変ろうとする姿に胸が高鳴ります。

兄を悪者に描いてないところもこの映画の優しいところで
家族のために安定を求める兄の姿に、きっと男性の多くは共感することでしょう。
ボーがまた憎めないキャラなんですよね。
禿隠しのスプレーシーンの止めのポーズと表情が楽しくて、何回観ても笑う(笑)



そして、やっぱり兄弟は兄弟
一緒にピアノを奏でれば直ぐに心が通じ合う感じも心地よい。

ジャックのアパートに遊びにくる子供のエピソードしかり
現実から目を背けず、しっかり前を向いて希望を持ち続ければ
何かが変わるんだと思える作品でした。
「これから始まる」大人の恋の行方にもホッと一息。

ジャジーな音楽もかっこいい、大好きすぎる粋な大人映画でした。