しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】天使の顔

Jean Simmons_Rober Mitchum_Angel Face_1952

【作品情報】
天使の顔(1953)アメリ
原題:Angel Face
監督:オットー・プレミンジャー
脚本:オスカー・ミラード/フランク・S・ニュージェント
出演: ロバート・ミッチャム 、ジーン・シモンズ、 ハーバート・マーシャル、 モナ・フリーマン、 レオン・エイムズ、 バーバラ・オニール
巨匠たちのハリウッド オットー・プレミンジャー傑作選 天使の顔 [DVD]   
 
miskaさんからのタイトルお問い合わせに
HKさんが「これでは?」と教えてくれたのが『天使の顔』
録画していたので早速鑑賞しました。

【感想】
丘の中腹の瀟洒な家でガス中毒騒動があり救急車が呼ばれたが
幸い発見が早くこの家の後妻キャサリンは無事だった。
帰り際、救急車の運転手フランク(ロバート・ミッチャム)はピアノを奏でる娘(ジーン・シモンズ)に気づき
「大丈夫だったよ」と声をかけるが、何故か娘は動揺し泣き崩れる。
頬を平手で打つとようやくを娘は落ち着くも、フランクもお返しに平手を食らった。
フランクを気に入った娘ダイアンはこのあと救急車のあとをつけ、フランクとその恋人に接近。
フランクの夢の実現をチラつかせ、お抱え運転手に迎え入れる。

実はダイアンがピアノの前で泣き崩れたのは継母の殺害に失敗したから。
父を愛するダイアンは継母により父が腑抜けになったことを憂い、キャサリンに恨みを抱いていた。
やがてダイアンは二度目の計画を実行するが・・

というお話でありますが、miskaさんいかがでしょう。
ダイアンは恋人からフランクを奪った形となり三角関係も成立。
フランクは完全に人生を狂わされてしまうし、車の事故も出てきます。

ただ、継母を殺し、結局はフランクも翻弄するファムファタールなダイアンですが
内面は実に寂しい娘で、フランクを純粋に心のよりどころにしていたところがmiskaさんの記憶のイメージと違っているかなぁ。
しかしまぁ、事故のシーンは強烈で、題名が思い出せなければ探したくもなるってもの。
エンディングもフィルム・ノワール史上屈指の緊張をもたらし、最高に面白い作品でした。

ところで、この映画を教えてくれたHKさんの記事でも触れられてますが
本作の制作秘話は作品を知る重要な要素となると思うので、以下に番組の解説者(この回は自称ノワールの帝王wエディ・ミュラー)の言葉を紹介します。

本作の製作を担当するのが当時映画会社RKOを経営する億万長者のハワード・ヒューズ
ヒューズはジーン・シモンズと契約を交わしており、これが契約最後の作品です。
ヒューズがシモンズに興味を持ったのは悲劇女優としての資質のみ。
彼は最後の作品としてシモンズを思い切り痛めつけるものを作ろうと画策し、脚本を選び
スパルタ演出で知られるオットー・プレミンジャーを監督に雇ったんですね。

まず最初にした虐めがシモンズの髪を切り、かつらをかぶらせるということ。
俳優であるシモンズの夫を苦しめるためでもあります。

プレミンジャーは序盤、ミッチャムがシモンズに平手打ちするシーンを何度も撮り直し
テイクごとに「もっと強く!」と要求したそう。

しかし、このときミッチャムはプレミンジャーに歩み寄り
プレミンジャーの顔を力いっぱい打って
「こうか?オットー、これがアンタの望みか?」と言い放ったとか。ミッチャム カッコイーー!!
以来、シモンズはミッチャムによって守られ、撮影も無事終了。

後に年老いたシモンズは本作を上映するフィルムフェスティバルに招かれたそうですが
それまでニコニコとバーガーを食べていた彼女がこの平手打ちのシーンで涙を流して退室。
撮影がどれだけ辛かったか、ミッチャムにどれだけ感謝したかを思い出したんだそうです。

シモンズにとってはトラウマ的な撮影となりましたが、撮影現場の緊張もあってか
作品は珠玉のフィルム・ノワーレとして後世に残ることになったんですね。