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映画ノート

【映画】動く標的

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【作品情報】
動く標的(1966)アメリ
原題:Harper
監督:ジャック・スマイト
出演:ポール・ニューマンローレン・バコールジュリー・ハリスジャネット・リー/ ロバート・ワグナー/ シェリー・ウィンタース/ パメラ・ティフィン / アーサー・ヒル
 
【あらすじ】
私立探偵ハーパー(ポール・ニューマン)は友人の弁護士アルバートアーサー・ヒル)の紹介で、失踪した大富豪サンプソンの捜索を引き受ける。依頼者のサンプソン夫人(ローレン・バコール)は夫の浮気を疑うが、やがて欲につき動かされた人間たちの犯罪の構図が見えてくる・・
 
【感想】
ロス・マクドナルド原作の私立探偵ルー・アーチャーものミステリー小説をジャック・スマイトが映画化しました。
役名がルー・アーチャーではなくハーパーなのはニューマンがHから始まる名前にこだわりがあったからだそう。
 
この映画、なんたって印象的なのはジャジーでスタイリッシュな音楽と効果音の使い方ですね。
 
朝、暗い部屋に目覚まし時計が鳴り響く瞬間からの冒頭のシークエンスがとにかくカッコいい。
時計を止めると小さな振動音が響き、ブラインドを開け、陽光が射し込んだ瞬間にジャン!と音楽が始まる。
身支度を整え、出がらしで淹れたコーヒーにウへ
ハエを「バン!」と叩くと廊下でおじさんがモップで床を「バン!」。
音の連動が見事でスタイリッシュな演出にハート鷲づかみにされます。

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豪邸を訪ねると富豪夫人が失踪の夫の捜索を依頼するというのはハンプリー・ボガート主演の『三つ数えろ』(1946)を思い出します。『三つ数えろ』で富豪の娘だったローレン・バコールを本作では富豪夫人に起用してるのも偶然とは思えません。
 
原作は未読ですが、犯罪組織に迫るさまはハーパーの類稀なる勘のよさと偶然に頼る感もあり
ミステリーとして面白いかは疑問です。
でも向こう見ずでお茶目なニューマンの魅力炸裂で、なんかいいんですよねぇ。
 
好きなのはハーパーが別居中の妻の元を訪ねるシーン。
思えば冒頭、ハーパーが目覚ましの鳴る前から起きていたのは、妻のことを考えていたからでしょう。
妻と離婚の話し合いをすることになっていたその日に仕事を入れるのは、妻と別れたくない気持ちもあったから。でも彼は危険と背中合わせの仕事が妻に負担をかけていることも分かっている。
だから妻を自由にするのもハーパーの愛。
命を落とすかもしれない仕事に立ち向かいながら、妻を訪ねるのは
これが最後になるかもしれないという思いからでしょう。
ハーパーと仕事もまた切り離せないことを思い知らされ、
ちなみに妻スーザンはジャネット・リーだったのね。
妻がルンルンで作った目玉焼きの黄身を潰す動作に重なる効果音は『サイコ』ッぽくもありw
 
 
犯人と疑いながらも、心の中ではそうであって欲しくないと願ってしまうハーパーは本当に命知らずで探偵としては失格かもしれない。
でもその人間性こそがハーパーの魅力で、それによって犯罪を防ぐこともあるのかなぁと
とにかくニューマンがカッコいい映画でした。