しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】ドローン・オブ・ウォー



原題:Good Kill
日本公開:2015/10/1

アメリカ空軍に所属するトミー・イーガン少佐(イーサン・ホーク)は、ラスベガスの基地にあるコンテナにいながら、コンピューターで無人機ドローンを遠隔操作し、遠く離れた異国の地の爆撃を行っている。任務が終われば郊外の自宅に戻り、妻のモリージャニュアリー・ジョーンズ)と子供たちと一緒に過ごすのがトミーの日常だったが・・



ガタカ』のアンドリュー・ニコルイーサン・ホーク主演に描く戦争映画です。

アメリカは911の報復に、タリバン武装勢力のアジトをドローンによる遠隔操作で空爆しています。ドローンを操縦し爆撃の発射を担当するのがイーサン演じる空軍少佐でパイロットのイーガン。
爆撃が成功したときに彼が言う「一掃した」が原題の「Good kill」です。
しかし相手は当然ながら血が流れる人間であり、時には女子供を巻き添えにすることもあってイーガンは精神を疲弊させていくんですね。

まず驚くのが、ドローンがこんな風に使われてるという実態。
敵地に行くこともなく、スクリーンを見ながら敵を爆撃する様子はまるでテレビゲームです。

モニターが映し出すドローンからの映像はまるで神の目線。
郊外の悪者に罰を与える行為自体が神の思し目であるがごとしです。
面白いのはイーガンの自宅も同じように上空から映し出していること。
ラスベガスの郊外にあるイーガン宅は、中東のテロリストらの家と同じように黄色い砂漠の中に建設された振興住宅街の一角にあるんですが、イーガンの家だけが不自然なまでに青い芝生を植えているのは、奴らとは違うというイーガンの主張が形になったものでしょう。


イーサンはパイロットとして爆撃機を操縦していた頃を回想し
その頃に帰りたいと思っている。
同じ戦争でも、自らの命を危険に晒しつつ向かってくる相手と戦う昔スタイルの戦争はある意味スポーツ感覚だったでしょうね。
高揚感の中、倫理など考える余地もなく、国を守るという使命に燃えることも出来たでしょう。


爆撃シーンが何度も繰り返されることに飽きてもきますが、イーガンの苦痛を観客も体現するという意味では効果的と言えますね。
女性兵士スアレスゾーイ・クラヴィッツ)の率直な言動が正義を語っていてよかった。

神は上空から何を見るのか。
悪いやつにおしおきをするのは、はたして正義なのか。
戦争の是非を含め、複雑な思いで見終えました。

トラックバックされた記事

  • 「ドローン・オブ・ウォー」は、戦争の本質が垣間見れる反戦映画としてオススメ。

    今回は新作の「ドローン・オブ・ウォー」をTOHOシネマズ川崎プレミアスクリーンで観てきました。ここは椅子が豪華で座席配置もゆったりしているのですが、特別料金で上映することがなくなってしまい、普通料金で観られるようになってからは、あんまり豪華感がなくなっちゃったんですよね。ちょっと椅子がいいだけの映画館。 アメリカ軍が戦争に無人戦闘機を導入するようになったのは、2000年代に入ってからで、その最も盛んであった、2011年、空軍のジェット機乗りのイーガン少佐(イーサン・ホーク)は、紛争地域での 

  • 「ドローン・オブ・ウォー」

    これが現代の「戦争」である。エアコンの効いたコンテナの中で、桿を握り発射ボタンを押す。命中すれば「グッド・キル」と呟き、車を走らせ家族の待つ自宅に戻る。だが、「戦争」である事に変わりはない。コンテナの扉には「ここから合衆国外」とコーションが付いている。そこは領空外なのである。入隊する若者の半数はゲームセンターでスカウトされた。遠い異国を旋回するドローンを操るのに体力や根性は必要ない。ただ、技術のみ。しかし、恐らくは大いなる精神力も…。トミー・イーガン(イーサン・ホーク)は空軍パイロットとしてイラ 

    ここなつ映画レビュー

    2015/10/9(金) 午後 0:28

  • 『ドローン・オブ・ウォー』お薦め映画

    どんな大義名分があろうと、自分のクリックひとつで人が死ぬ。これは遊びのゲームではない。敵ばかりでなく関係ない女性や子どもまで巻き添えにしてしまうこともあるから、罪悪感を抱く兵士の方が正常と言える。進化する現代戦争の実態と矛盾を描いたタイムリーな問題作。 

    名機ALPS(アルプス)MDプリンタ

    2015/12/6(日) 午後 0:05