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映画ノート

【映画】地獄のサブウェイ

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【作品情報】
地獄のサブウェイ(1972)イギリス
原題:Law Meat
監督:ゲイリー・A・マーシャル
脚本:セリ・ジョーンズ
出演: ドナルド・プレザンス / クリストファー・リー/ ノーマン・ロシントン/ デヴィッド・ラッド/ シャロン・ガーニー/ ヒュー・アームストロング


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「Mind the door!(閉まる)ドアにご注意ください」

いつものアナウンスの響く夜の地下鉄駅構内で
若いカップルが倒れている男性を発見

「酔っ払いだろ。ほっとけば自分で帰るよ」
「糖尿病患者かもよ。カードを持ってないか調べましょ」

2人は財布から名詞を取り出し名前を確認するが、糖尿病の記載はない。
とりあえず駅員に通報。しかし戻ってみるとそこに男の姿はなかった。

翌日、スコットランド・ヤードの捜査官(ドナルド・プレザンス)は
失踪者の多くが駅で目撃されたのを最後に姿を消しているという奇妙な一致に注目していた。

さらに調べるうちに、そこでは大昔の建設工事中の崩落事故で
男女8名が生き埋めになっていたことがわかってくる。
しかも業者は破産し、事故の被害者を放置したままプラットフォームも閉鎖したというのだ。


【感想】
英国男優フェア中につき、こちらも英国産ホラーで。
今日は『ゾンゲリア』のゲイリー・A・マーシャル監督の長編デビュー作
地下鉄駅の連続失踪事件にまつわる恐怖を描くホラーです。
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この映画、面白いのは失踪事件の真相をミステリー風味に描いていくところ。
と言っても、さほど鋭い推理が展開されるわけでないのだけど
見ている観客だけは、「あー、そういうことか」と
ことの全てを理解していくと言う見せ方が面白いですね。

鍵となるのは「男女8人」と「死体を放置したまま駅を閉鎖」という事実。
allcinemaなどの映画サイトでも作品紹介に含まれているので明かしますが
作業員は実は生存していて、地下鉄のさらに地下で子孫を作り、
ネズミや人を食べて生き延びていたわけです。

彼らが生存している事実を明かさないまま「地底人」になったのは
おそらくは業者や社会への恨みもあったのでしょうが
最後の生き残りとなった子孫が、すでに言葉という文化を失った今、
それは想像するしかないのですよ。

しかし、彼らなりに仲間の死を悼み死者を祀る文化を持っていることは
映像から見て取れます。
そして彼らが唯一知る「言葉」で、思いの全てを伝えようとする終盤は
とても切なく感じられ、ただのB級スラッシャー映画に終わらない趣がありました。

ドナルド・プレザンス演じる捜査官が、
シニカルで人をおちょくったようなキャラだけど
目の付け所は鋭くて、確実に事実に迫っていくところが面白い。
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クリストファー・リーはワンシーンのみ、MI5のエージェントとして登場します。


病んだ「地底人」の風貌は『ゾンゲリア』に通じるものがあり(汗)
そいつに追っかけられる終盤はなかなかスリリングでした!

ちなみにポスターのような地底人が裸でたむろするシーンはありません。