【映画】『The Mind of Mr. Soames(原題)』子供の心を育てるとは
The Mind of Mr. Soames(原題)(1970)イギリス
原題:The Mind of Mr. Soames
監督:アラン・クック
脚本:ジョン・ヘイル/エドワード・シンプソン
出演:テレンス・スタンプ/ロバート・ヴォーン/ナイジェル・ダベンポート
【あらすじ】
Dr.バーゲンを招いて行われた実験的脳外科手術により、生まれてから30年間ずっと昏睡状態にあったジョン・ソームズが覚醒した。
【感想】
60年代はハマーと並んでホラー作品を手がけていたイギリスのアミカスプロダクションは70年代に入ってSFを制作するようになり、
本作はそのさきがけとなる医学分野のSFです。
30年間の昏睡から目覚めるソームズを演じるのはテレンス・スタンプ。
目を覚ましたソームズはいきなり泣く(笑)
そう、身体は30歳でもソームズは生まれたばかりの赤ちゃんと同じ。
組織の長であるメイトランド医師(ナイジェル・ダベンポート)は、そんなソームズに自身のプログラムにそって教育を施します。
睡眠をつかさどる部分以外は脳細胞は正常に機能していたソームズは、普通の乳幼児よりも早い発達を遂げると仮定し、早期に社会に適応する人間に仕上げることを目指している・・ というと聞こえはいいのだけど
メイトランドにとってソームズはあくまで研究の対象なんです。
しかも病院の宣伝のため、ソームズの成長をテレビショーで流す契約まで結んでいる。
かくしてスパルタ的な教育を受けるソームズ。問題は心の成長が追いついていってないこと。
ストレスから心を閉ざすソームズを心配するのが手術を担当したバーゲン医師(ロバート・ヴォーン)。
三人の子供を持つバーゲン医師は、愛情をもって子供に接する術を知っていて
ゲームや遊びを取り入れた教育を自ら実践すると、ソームズは興味をもって様々なことを吸収していきます。
しかし、バーゲンとソームズの関係が密になリプログラムどうりにことが運ばないことにメイトランドは苛立ち、2人を引き離します。やがてソームズはある問題を起こし病院を飛び出すんですが・・・
このあとは赤ちゃんのはじめてのお出かけをちょっとスリリングに追いつつ
その顛末を見せていきます。
SFとされているけれど、本作は子供の成長に必要なものは何かを教えてくれる作品でしたね。
いつまでに文字を覚えさせるとか、歩かせるとか、そういったメイトランドの計画も間違ってはいないけれど
心の発達を無視した教育はモンスターを生みかねない
必要なのはやっぱり愛情であり、情操に働きかける育て方なんだと思う。
そういう意味で某ヴァイオリニストのゲーム機パキン事件のことを考えさせられましたね。
ゲーム機は修理できても子供が心に負った傷はお金で修理できないですから。
大人だけど中身は赤ちゃんで、モノを覚える喜びや新しい世界への怖れを表現したスタンプさんはグッジョブ。
ずっとロンパースみたいな姿なのも可愛い(笑)
リアリティテレビを取り上げたものとしては先駆け的存在じゃないでしょうかね。
愛情あるスキンシップが傷ついた心を癒すことに希望を感じさせるラストにホッ。
小さなお子さんをお持ちの若いお父さんお母さんに、ぜひ観て欲しい作品・・
だけどごめんなさい。これ日本ではソフトになってないみたいでした(汗)