【映画】悪魔のシスター
悪魔のシスター(1973)アメリカ
原題:Sisters
監督:ブライアン・デ・パルマ
脚本:ブライアン・デ・パルマ/ ルイザ・ローズマーク・ジャクソン
出演:マーゴット・キダー / ジェニファー・ソルト/ チャールズ・ダーニング/ バーナード・ヒューズ/ ウィリアム・フィンレイ/ メアリー・ダヴェンポート/ ドルフ・スウィート
マンションの向かいの部屋で人が殺されるのを目撃した女性記者は警察に通報。しかし現場の部屋には殺人の形跡がなく・・
【感想】
「アトランダム映画祭」のっかり特集4本目
映画祭のコンセプトに「あまり有名でないもの」とあったはずなので、ブライアン・デ・パルマ作品を持ち込むのは反則かな。
でも最近テレビで放送されて(コーマン先生がゲスト!)再見したのでいっときます。
主人公のダニエル(マーゴット・キダー)はフランス語なまりのモデル。
彼女はテレビ番組の出演で知り合った黒人男性フィリップと食を共にした後、自宅マンションで一夜を過ごすが、
翌朝腹痛で目覚めた彼女は薬とバースデーケーキを買ってきてくれたフィリップをナイフで惨殺する。
向かいのマンションからこれを見ていた女グレイス(ジェニファー・ソルト)が通報したことから、警察の手が入ることになるが部屋に死体はない。
警察に妄想的迷惑行為とみなされたグレイスは腕利きの私立探偵を雇い、事件の真相に迫る。。
というはなし。
もうね、向かいの窓の住人が事件を目撃するのは『裏窓』だし、
ダニエルが姉と見られる誰かと言い争いをする声がしたり、殺害シーンは『サイコ』で
デ・パルマによるヒッチコック節が炸裂してます。
でもそれはくまでヒッチコック愛であって、真似と揶揄する必要のないことは
映画の面白さが証明してますね。
独特なのはちょっと悪趣味とも言えるフリークな味わいが加味されるところと
一種独特のユーモア。
少しネタバレで書きますけど
ダニエルはシャム双生児の片割れで、分割手術の際に姉のドミニクを亡くしているという秘密がある。
男を殺す理由を死んだ姉の怨念のように解釈すればホラーってことになるんでしょうけど
これはむしろ姉を犠牲に自分だけが生き残ったダニエルの罪悪感からくる心の崩壊とした方がしっくりくる。
『サイコ』の母同様、姉の幻影がダニエルにもうひとつの人格を生み
孤独にさいなまれ男を求めれば、切り離した部位の痛みとともに狂気が首をもたげる。
ダニエルの罪を隠ぺいする元夫にも、フリーク志向の気味悪さを感じるところだけど
それはある意味最も純粋な愛かもしれない。
ラストシーンの「なおソファーを双眼鏡で観察する探偵の意味はどうあれ
冒頭のテレビ番組から繰り返される「ぞき見」に徹した形式美が微笑ましい。
コーマン先生によると「おかげで少しお高くなった」らしいですが
ヒッチコック風を盛りあげるバーナンド・ハーマンの音楽もいい感じで、面白い映画でした。