【映画】『手紙は憶えている』認知症ナチハンター 復讐の旅路の果てに・・
手紙は憶えている(2015) カナダ/ドイツ
原題:Remember
監督:アトム・エゴヤン
脚本:ベンジャミン・オーガスト
出演:クリストファー・プラマー /マーティン・ランドー/ヘンリー・ツェーニー /ブルーノ・ガンツ
日本公開:2016/10/28
【あらすじ】
老人ホームに暮らすゼフ(クリストファー・プラマー)はあるミッションを遂行するためホームを抜け出した
【感想】
アトム・エゴヤン監督の新作は、ある老人の復讐の旅路を描くサスペンス・ドラマです。
クリストファー・プラマー演じるゼヴはアメリカの老人ホームに暮らすお年寄り。
腕の数字の入れ墨から彼がホロコーストの生存者であることがうかがえます。
妻を亡くして一週間経ってもまだ朝起きると妻を探してしまうほどの認知症を患うゼヴですが
彼は老人ホームを抜け出し、あるミッションを遂行する旅に出る。
家族を殺したナチスドイツの残党に復讐しようとしているのです。
制作年の2015年は戦後70年の節目。
終戦時、20歳だった人ももう90歳。幹部級のナチス残党ともなれば100歳は超える計算になるわけで、
リアルタイムのナチスハンターを描くこういう映画が作られるのも、もうほとんど最後でしょうね。
ゼヴもまた90歳という高齢で、認知症を患う彼は、どうして見知らぬホテルにいるのか、自分が何をしているのかさえもわからない。そんなゼヴはホーム仲間であり、同じアウシュヴィッツの生存者のマックス((マーティン・ランドー)に渡された手紙を読み、腕の入れ墨を目にすることでかろうじてミッションを自覚しているというのが面白いところ。
つまりゼヴは自分の「恨み」の気持ちの実態を持たぬまま復讐を実行しようとしている。
アイデンティティの不確かさというのが映画のカギですね。
被害者と加害者の両方の思いを伝えつつノワールで終わらせ
でも気づけば見事に復讐を完結させているんだから、見事としか言いようがない。
人間、忘れることは幸せなこともあるかもしれない
あるいは知らないままでいたいこともある
タイトルの「リメンバー」が深く切ない余韻を残す傑作です。