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映画ノート

【映画】ロブスター

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 ロブスター(2015 アイルランド/イギリス/ギリシャ/フランス/オランダ/アメリ
原題:The Lobster
監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:ヨルゴス・ランティモス / エフティミス・フィリップ
出演: コリン・ファレル  / レイチェル・ワイズ/ オリヴィア・コールマン/ ジョン・C・ライリー/ レア・セドゥ/  ベン・ウィショー

【あらすじ
突然妻に去られ、独身となってしまったデヴィッドは兄である犬とともにとあるホテルに送られる。彼はそこで45日以内にパートナーを見つけなければ、事前に希望した動物へと姿を変えられてしまうのだった。ちなみにデヴィッドの希望はロブスター。こうしてデヴィッドのパートナー探しが始まるが、・


【感想
籠の中の乙女』のヨルゴス・ランティモス監督によるブラックコメディです。

独身者は悪とされる世界(汗)
妻に去られ、ホテルでのネルトン暮らしを余儀なくされるデイヴィッドは、期間内にパートナーを見つけることができるのか、はたまたロブスターに変えられてしまうのか という話。


独自のルールに縛られる空間に生きる主人公が、どんな突破口を見出すかというテーマは前作と同じ。
でも今回はパートナ探しに失敗したら動物に変えられてしまうというSFにパワーアップしちゃってます。

しかも本作ではホテルのほかに「森」という対極の世界が存在し、ここでは恋愛が禁止され、規則を破れば罰則が待ってる。どうすりゃいいのよ状態。
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相変わらずシュールでブラックですが、いくつか面白い視点がありますね。
一つ上げれば、何故かみんなパートナーを見つけるときに、「似たところ」を見つけるのですよ。
ベン・ウィショー君演じる足の悪い男の死んだ妻も足が悪かったとか
相手探しに行き詰ったデイヴィッドが、無感情な女に近づくため、感情のない振りをするし
森で出会ったレイチェル・ワイズを好きになるのも同じ「近視」だったから。
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こういうのはルールに縛られ、脱個性に生きる現代人を風刺してるんでしょうね。
ロマンス的には自分を犠牲にして相手に合わせることを揶揄してもいるのかと。

えっと、少し内容に触れて書きたいことがあるので、以下ネタバレとなります。
未見の方はご注意ください。



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 ホテルを抜けて「森」に入り、女性を愛してしまったデイヴィッドだけど、森では恋愛が禁止されていて
お相手のレイチェル・ワイズは手術で盲目にされてしまいます。

最後はレストランのトイレで自らの目にナイフで突きたてようとするデイヴィッドと、一人席で待つレイチェルの姿をとらえて暗転。この後二人がどうなったかは観客の解釈に任せるという終わり方でした。

ふむ。オプションとしては3つほどありそうです。
1つはデイヴィッドも愛を示すために盲目になる
2つ目は、レイチェルには目を傷つけたと嘘をついて、盲目の振りをして二人で生きる。
3つ目は、レイチェルを残し、ホテルに戻ってロブスターになる。

個人的には3だと思います。
レイチェルは盲目にされたときに、「なぜ自分なんだ」と言っていて
デイヴィッドは本当の愛を探すのは難しいと気付いているから。
「森」のリーダーであるレア・セドゥの役割も「人は利己的であり、真実の愛はない」ことを教えることだった・・
なんとも辛辣ですが、そこに人の本質も描かれていて、だからこそイタくて居心地が悪いと感じる映画です。

最後にロブスターになったファレルが出てこなくてよかった(笑)

「英国男優50人斬り」、今日はコリン・ファレルベン・ウィショー君の二人斬りでした。