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映画ノート

【映画】妖婆・死棺の呪い


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 妖婆・死棺の呪い(1967 ソ連
原題:Viy 
監督/脚本:ゲオルギー・クロパチェフ/
コンスタンチン・エルショフ
出演:レオニード・クラヴレフ/ナターリヤ・ワルレイ/ニコライ・クトゥーゾフ

【あらすじ】
中世のソ連。神学校で学ぶホマーは休暇で帰省する途中、友人らと道に迷い、一軒の農家に泊めてもらうことにする。しかし、彼らを招き入れた老婆はホマーの寝床を襲い、あげくホマーを連れ出し空を飛び始めたではないか。老婆は魔女だと気づいたホマーは地上に降りたところで魔女を滅多打ち。しか老婆は美しい少女に姿を変えており・・


【感想】
ハロウィンホラー特集2本目。
『ザ・ウィッチ』で頂いたコメントから、みーすけさんの幼少時のトラウマ作品を教えてもらいました。
レンタルになくて残念に思っていたところYouTubeで見つけて早速観ました!

いやー面白かった。

今回はネタバレ全開なのでご注意ください。


魔女と空を飛んだホマーは、「この魔女!死ね!」とばかり棒で滅多打ちにするんですが
なんと魔女はいつしかうら若き乙女に姿を変えている。
演じている女優さんが、韓国整形美女のお手本ともいうべき絶世の美女でね。
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怖れおののき、瀕死の美女を残しその場から逃げ帰るホマーですが、翌日彼は神学校の先生に呼び出され、ある家の娘が死にそうなので祈りを捧げるため屋敷に行けと告げられる。
驚くことに娘は何者かに滅多打ちにされ、危篤でありながらホマーを指名したのだという。

いやーな予感。拒否は受け入れられずやむなく屋敷に赴くことにするが、案の定そこにはあの娘。
しかもすでに死んでいた。
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腹をくくり、死者をおくる祈りの儀式を執り行うことにするホマー。
しかし、彼は魔女の執拗な攻撃に身をさらすことになる・・という話。

この映画によると、ソ連では死者をおくるため
三日間、神父なりが祈りの言葉を捧げるんですね。
神父は夜間、寝ずにお勤めをする。しかもご丁寧に外から錠までかけて。

宗教的なことはわかりませんが、これからするとこの儀式は死者を正しい道にいざなうためのものでしょうか。
屍となった体には邪悪なものが入りたがる。
シドニー・ルメットの映画『その土曜日、7時58分』のタイトルに使われていた、「May you in heaven half an hour before the Devil knows you 're dead」というアイリッシュの言葉を思い出します。

美しい娘は生前から魔女に魂を売っていたのか、そこのところはわかりませんが
とにかく魔女は娘の身体を欲し、ありとあらゆる魔物を駆使してホマーの祈りを邪魔しにかかる。

夜中に娘が目を開き、棺桶から抜け出してホマーを襲う様子がまぁ恐ろしいこと。
みーすけさんのトラウマも納得だ
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ただし、この白線の中には入れない

一日目より二日目、さらに三日目とその攻撃は激しさを増す。
異形の者たちがわらわらと現れる終盤の地獄絵図は圧巻でした。

しかし、私はてっきりあの美女がみーすけさんの言う「魔女ヴィー」だと思っていたので
最後に投入される「ヴィー」があれだったのには笑ったわw(正確にはビデオタイトルは『魔女伝説:ヴィー』。
「まぶたがかぶさって目が見えない」と、魔物たちに両のまぶたをあげてもらうヴィーが意外な可愛さ(笑)

特記すべきはハマー風、香港映画よりの特撮。
棺桶に乗って宙を飛び回る娘の図は圧倒的な迫力でした。ぐるぐると回る映像はデパルマ風。

一方では、教会周囲の日常に牧歌的な緩さがあって、ミュージカルかいと思うほどの歌の演出も心和む。
一本で二つの映画を観てる気分だもんね。

原作はロシアの文豪ニコライ・ゴーゴリの短編だというからまた驚きです。
さり気にアーティスティックで、間違いなくユニークなホラー。旧ソ連産侮れず。

ハロウィンにピッタリ!!