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映画ノート

錆びた黄金

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錆びた黄金(1983)

ニコラス・ローグ監督がジーン・ハックマンを主演に、夢を手に入れた男の顛末を描くヒューマンドラマ。

ゴールドラッシュに沸く20年代、黄金を探し当てることに人生を懸けたジャック(ジーン・ハックマン)はついにアラスカの雪山で金鉱を発見、億万の富を手に入れる。

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十数年後、 マイアミの孤島を買い取りさざ波の音の聞こえる邸宅で優雅な生活を送るジャック。しかし彼は幸せそうに見えない。ジャックの中には、常に誰かに富を奪われるのではないかとの危惧があり、娘婿のクロードには財産だけでなく魂さえ奪われるのではないかと思っている。こうなればもう病気の域。クロードもまた貴族出のプライドから成金のジャックを見下しており、2人の仲は一触即発の緊迫感が漂うほど険悪になっていく。
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そんな折、島にカジノ建設を企てるマフィア(ジョー・ペシ)がジャックに接近。弁護士(ミッキー・ローク)をたて、温厚に交渉を進めようとするも、ジャックに島を手放す気がないと知るや態度を一変。嵐の接近とともに、映画に不穏な空気が立ち込め始める。

羽毛舞い上がるベッドルームを映し出すショットにハッとしたのは、それが売春宿の女主人フリーダの水晶に映し出されたものと重なったから。
何故か茶色く静止したジャック、大粒の雪と思ったものは羽毛、そして炎。
フリーダが見ていたのはジャックの最期の姿だったのか。
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命と夢をかけた金を掘り当てた瞬間に、ジャックの人生は終わっていたのかもしれない。
情熱をかけるものの何もない人生は苦痛に満ち、だからこそ、あれほど残酷な死に際に、彼は静かにほほ笑むのです。
狂気から虚無感、諦念へと表情を変えるジーン・ハックマンが素晴らしい。

終盤はジャックの殺人容疑で捕らえられたクロード(ルトガー・ハウアー)の裁判へとシフト。トレイシーは証言台で夫の無実を切々と訴えるが、トレイシーが愛すれば愛するほど、クロードの苦悩を煽ることになり、誰も幸せにならないのが辛い。



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ナイーヴで危険な香り漂うクロードを演じたルトガー・ハウアーラッセルのコンビは最高。
画面からあふれるラッセルの美しさに監督の愛を感じます。(この3年後に二人は結婚)
クレオパトラ風の衣装でハウアーと戯れるシーンなど、もはやラッセルのプロモーションビデオだったよね。

どういう意味だろうと思うところも多く、ちゃんと理解するにはまだ何度も観なければいけない気がする。それでも神秘的なシーンに目を奪われることも多く、これもお気に入りの仲間入り。
ニコラス・ローグやっぱり好き。
これはもっと評価されるべきだと思う。


映画データ
原題:Eureka
製作国:イギリス/アメリ
監督:ニコラス・ローグ
脚本:ポール・メイヤーズバーグ
出演:ジーン・ハックマンテレサ・ラッセルルトガー・ハウアージョー・ペシミッキー・ローク 他
原作:マーショル・ホウツ