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映画ノート

【映画】『アフターマス/Aftermath(原題)』「カティンの森」の脚本家が新たに明かすポーランドの歴史

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アフターマス/Aftermath(原題)
(2012)ポーランド
原題:Poklosie/Aftermath
監督/脚本:ヴワディスワフ・パシコフスキ
出演:マチェイ・シュトゥル/Ireneusz Czop 他

【あらすじ】
シカゴに暮らすポーランドからの移民のフランチェシカは20年ぶりに故郷の土を踏んだ。子供を連れてアメリカにやってきた弟の妻が、その理由を語ろうとしないからだ。弟ヨゼクと再会したフランチェシカは、弟がユダヤ人の墓石を300以上も集め母の残した農地に置いていること、地域住民に疎外されていることなどを知ることになる。

ミステリー特集7本目

アメリカからポーランドに帰郷した主人公が弟とともに土地にまつわる秘密を暴いていくというドラマ。
監督/脚本を務めるヴワディスワフ・パシコフスキはアンジェイ・ワイダ監督の『カティンの森』の脚本家だそうで、ポーランドの歴史を紐解くことに情熱を捧げる方なんでしょう。
日本では未輸入のようだけど、とにかく面白かったので紹介します。


冒頭、バスを降り立ったフランチェシカが、森のそばを歩くシーンの効果音の恐ろしいこと。
彼は人の気配を感じ森に入るもそこには誰もいない。
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20年ぶりに再会した弟ヨゼクはコミュニティではじきものにされ、時々何者かに襲撃されている。
一つにはクリスチャンばかりのこの地で、彼はユダヤ人の墓石を自分の農場に集めてるんですね。
墓石が道路の敷石などに使われていることにユダヤ人への同情を感じているらしい。お金を出して墓石を買い取るようになった弟に妻は愛想を尽かしたのだとか。
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ヨゼクはなぜユダヤ人の墓石を集めるのかをミステリーの発端に、この映画はその土地にまつわるダークな歴史を明かしていく。父から受け継いだ農地の秘密、この土地にユダヤ人がいないわけ、村人が激しくユダヤ人を嫌う理由など・・ただただ驚くばかり。ヒントは『イーダ』と言えば、わかる人はお分かりになるでしょう。しかももっと壮絶です。

弟の行動に驚いていた兄ですが、いつのまにか一緒に墓石を集めようとする。
何故?と言う部分が『リング』に通じるホラーなんだなこれがまた。

絆が深まったころ、歴史を闇に葬るかどうかで衝突する兄弟。
そうして迎えるクライマックスは絵的にも衝撃的です。
犯人を明白にしないところにホラーのテイストを加味し、奥行きを持たせた一本です。


ミステリー特集、これにて終わりとします。
ご参加ありがとうございました。