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映画ノート

【映画】最後の追跡

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 最後の追跡2016 アメリ
原題:Hell or High Water
監督:デヴィッド・マッケンジー
脚本:テイラー・シェリダン
出演:ジェフ・ブリッジスクリス・パインベン・フォスター

【あらすじ】
テキサスの田舎町の銀行で覆面の二人組による銀行強盗が発生し、老齢の州警察の長マーカスが相棒のアルバートとともに犯人を追う


数ある前哨戦の中で、個人的に一番信頼を置いているのはワシントンDC映画批評家協会賞の選出です。
彼らが今年の作品賞に選んだのは『ラ・ラ・ランド』。オスカーもぜひとって欲しいと思うところですが、今日は作品賞候補となった5本のうちの一本『最後の追跡』です。

気になりながら劇場公開を逃したのが非常に悔やまれる。
今のところ今年のマイトップ5に入る好きな作品でした。

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テキサスの田舎の小さな銀行の強盗シーンで幕を上げる本作。
犯人はベン・フォスタークリス・パインが演じる兄弟。
素人による犯行の危うさに緊張感を漂わせつつも、そのやり取りにテキサス人の気質を盛り込んだ演出がのどかでいい。自宅の農場に戻ると二人は車をショベルカーで埋める。墓場に葬るかのように。
おそらくは飢え死にさせてしまった牛たちもこうして埋めたのでしょう。

原題のHell or High Waterというのは直訳すれば地獄でも洪水でも。
つまりは何があろうと、どんなことをしてでもある目的を遂げねばならないという切羽詰まった状況をいうらしい。

クリス・パイン演じる弟は貧しさの連鎖から子供たちを救うため、10年間ムショ暮らしをした兄(ベン・フォスター)は孤独に母親を看取った弟に借りを返すために、なにがなんでも農場を守り抜きたかった。
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しかしながら兄の破天荒さからほころびが生じ、ジェフ・ブリッジス演じる退職間際のマーカスと先住民の血を引く相棒の州警察コンビが兄弟に迫ってきます。
本作は言ってみれば兄弟と警察、二組のバディ映画でもあるんですが、それぞれ確執の上になりたった信頼関係と絆の描き方と、役者の演技が素晴らしくワシントンDC映画批評家協会賞でアンサンブル演技賞に輝くのも納得。

兄弟は自分の富を肥やすためにやってるのではなく、彼らに捨て身の刹那感が漂う部分が、わびしくて渋い主題歌と荒涼とした田舎町の風景も相まって胸に迫ります。
アメリカの底辺には、こうした貧困にあえぐ人たちがいるという現実
悪魔に魂を売ってでも明日に希望を見出したいとの思いは、トランプを大統領に選んだアメリカ人の「なにがなんでも」という希望に重なる気がしたな。

ベン・フォスタージェフ・ブリッジスがダブルで助演男優賞候補に。
監督のデヴィッド・マッケンジーも監督賞にノミネートされていてワシントンDC映画批評家協会賞では5つのノミネート(一つは賞獲得)されています。

追跡劇の緊張感もただならぬものがあって、アクション映画としてもドラマとしても秀逸。
見ごたえガッツリの新時代の西部劇でしたね。

日本ではNetflixで配信してるらしいので、利用されてる方はぜひ。
というか、これを未公開にするとは。


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