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映画ノート

【映画】ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル(原題)

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 ハント・フォー・ザ・ワイルダーピープル(原題)(2016 ニュージ―ランド
原題:Hunt For The Wilderpeople
監督:タイカ・ワイティティ
脚本:タイカ・ワイティティ/バリー・クランプ(原作)
出演:サム・ニール/ジュリアン・デニソン/Rima Te Wiata  /レイチェル・ハウス       
あらすじ】
身寄りのない悪ガキリッキーは山奥の中年夫婦の家に養子にもらわれた。しかし気のいい里親のおばさんベラが急死。無口なおじさんヘック(サム・ニール)から福祉に戻すと言われたリッキーは焼身自殺したようにみせかけ家を出るが・・

【感想】
 英エンパイア誌選出2016年のトップ25から、今日は1位にランクインのニュージ―ランド作品。
身寄りのない太っちょの子供と孤独なおじさんのへんてこ逃走劇を描くアドベンチャー・ドラマです。

主人公のリッキーは母親がティーンエイジャーなことから里子に出され、あちこちの家をたらい回しにされてきた少年。
福祉の職員からは手の付けられない不良少年のレッテルを貼られています。

でも新しい里親のおばさんがとってもいい人で、ここでならうまくやっていけそう
そう思った矢先、おばさんが死んでしまい、おじさんからは福祉に戻すと告げられてしまうんですね。
またたらい回しにされるくらいならドラッグディーラーにでもなったほうがましと、逃走を図るリッキー。
そんなリッキーを追いかけてきたおじさんヘックはリッキー誘拐の容疑で警察に追われるようになり2人の奇妙な逃走劇が始まるという話です。
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ドタバタなアドベンチャーコメディに見えて、意外にもハートフルな作品です。
まずはリッキー少年とヘックのキャラクターがいい。
実は頭もよく俳句をたしなむ文学少年でもあるリッキー
誕生日を祝ってもらったことさえなかったリッキーがベラに自然な愛情を注がれるシーンは観ていて心が温まります。
朴訥で無口なヘックもベラが幸せであれば自分も幸せというタイプ。こういう素朴な役、サム・ニールにしては珍しい気がするんですが、うまいんですよね。
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ヘックはある事情からリッキーを一人で育てる自信がなく、ベラの死後は苦渋の決断を下すことになる。
しかし森の中でサバイバル生活を送るうちに、リッキーとヘックの関係性は少しずつ変わっていくわけですね。
少年の成長にフォーカスされがちなこういう話を、孤独なヘックの心の変化にも重きを置いているところが、個人的にはとってもよかった。
福祉の女性職員の描き方もインパクト大で、若い母親から生まれる子供の養育という社会問題についても考えさせられました。

ニュージーランドの広大な自然の中のサバイバル、終盤は『テルマ&ルイーズ』風になったり、緩急の付け方もうまい。
音楽もよくて、最終章で大好きな讃美歌が使われてるのも嬉しかった。
エンパイア誌一位は伊達じゃないと思える秀作でした。

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