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映画ノート

【追悼】ジョン・ハート『10番街の殺人』

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 10番街の殺人(1971 イギリス
原題:10 Rillington Place
監督:リチャード・フライシャー
脚本:クライヴ・エクストン
出演:リチャード・アッテンボロー
ジョン・ハート/ジュディ・ギーソン/パット・ヘイウッド/イソベル・ブラック/ミス・ライリー

【あらすじ】
アパートの管理人クリスティ(R・アッテンボロー)は、医師と偽って女性に声をかけ、部屋に連れ込んでは次々と殺していた。ある日、上階に住む若い夫婦が妊娠をめぐって争っている事を知り、二人に中絶を持ちかける・・・

【感想】
  ジョン・ハートの追悼に出演作品をいくつか観ます。
まずは初期の出演作品から、リチャード・フライシャーが実際にあった殺人事件を題材に描く犯罪サスペンス。
若い夫婦がアパートに越してきたらば、そこの管理人がとんでも連続殺人犯だった!という怖い話。

カタカナで書くとわからないけど、ジョン・ハートのハートはHurt 痛み。
映画の中で何度も死んだハートは、『エイリアン』の死にざまに代表される身体的な「痛み」はもちろん、広い意味の「痛み」を伴う役が多い気がしますね。
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本作でジョンが演じるのは10番街にあるアパートに越してくる妻子持ちの工員ティム。
妻が新しい命を宿しても、育てる余裕も、堕胎するお金さえなく、そのことがすべての不幸を呼ぶことになるのがなんとも痛い。
結果的に妻はリチャード・アッテンボロー演じる猟奇殺人犯、クリスティの餌食になるが、ティムは「不幸な夫」だけでは済まない。クリスティに丸め込まれ、死体遺棄を手伝い、あげく殺人の罪に問われることになるのです。

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見どころとしては、クリスティを演じたアッテンボローの怪演をあげないわけにはいかないですが
不条理に巻き込まれていくジョン・ハートの浮遊感が、映画を面白くしてるとも言えます。
呆然自失の中、虚脱感、憤り、恐怖、悔恨・・色んな思いが駆け抜ける
のちの『エレファントマン』を彷彿とさせる最後のお姿も印象的でした。

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監督のリチャード・フライシャーはじめじめと生々しい殺人事件を再現するのが上手いですね。
本作の舞台は、実際の事件の現場となったアパートだというから恐ろしい。
薄暗いアパート、死体を埋めた穴を掘り返そうとする犬、泣き止まない子供 
土からのぞく足、壁の中の背中等の演出の不気味さも極まる面白い作品でした。

ジョン・ハートの若く美しいお姿を見れたのもよかったなぁ。
というか、知ってる誰かに似てると思いつつ思いだせない・・



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