しまんちゅシネマ

映画ノート

バンド・ワゴン(1953)

bandwagon.jpg  

バンド・ワゴン(1953)

あらすじ
ダンス映画で名をはせたトニーも、もはや自分の人気の落ち目を悟らずにいられない。そんな時、親友夫妻からトニーのために舞台用のミュージカルコメディを書き上げたと誘われ・・


ミュージカルは苦手という思い込みから、古いミュージカルをほとんど知らないし、恥ずかしながらレジェンドとされるフレッド・アステアの作品をまともに観たのも今回が初めて。
今回この映画を観ようと思ったのも、実は『ラ・ラ・ランド』の公園でのダンスシーンが本作にインスパイアされたらしいと知ったから。

これですね。


新しい舞台で共演することに不安を感じるトニーとバレエ界のスター、ギャビー(シド・チャリシー)が、一緒にやっていけるかもう一度話してみようと夜のセントラルパークに繰り出すシークエンス。『ダンシング・イン・ザ・ダーク』のナンバーをバックにしっとり踊る二人のダンスシーンは、確かに『ラ・ラ・ランド』に通じるものがあった。

トニーはその昔活躍した大物ミュージカルスターという設定。
冒頭からトニーが映画で使用したステッキなどが競売に出されるが、50セントに値を落としても誰も落札しない。見てて申し訳ないと思ってしまうほどの自虐ネタが、30年代に活躍した彼のキャリアとシンクロする。
しかしながら歌を口ずさみ、ひとたび踊り出すとその優雅で軽やかなダンスに引き込まれずにはいられない。

正直バレエとの融合はあまり好みではなかったが、ファウストを盛り込んだというコンテンポラリーな舞台を否定し、往年のミュージカル最高じゃないかと、エンターテインメントに徹する姿勢に、この映画のアステア代表作としての醍醐味があった。
ハードボイルドなども取りいれた多彩な劇中劇も目に楽しく、ヴィンセント・ミネリのミュージカルへの造詣の深さと演出力を堪能。

ちなみにこちらは1970年のアカデミー賞で、プレゼンターとして登場した71歳のアステアが見事なダンスを披露した動画。
会場からは拍手が起こるものの、みんな座ったままで、反応が微妙なのだ。
図らずもこの映画のアステアの悲哀を再現してしまったようで切ない思いがした。ここはスタンディングオベーションで称えて欲しかったな。

映画データ
原題:The Band Wagon
製作国:アメリ
監督:ヴィンセント・ミネリ
脚色:ベティ・コムデン/アドルフ・グリーン
出演:フレッド・アステアTony_Hunter
           シド・チャリシーGaby
           オスカー・レバントLester_Marton
           ジャック・ブキャナンJeffrey Cordova
           ジェームズ・ミッチェルPaul_Byrd