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映画ノート

ステップフォード・ワイフ(1975)

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ステップフォード・ワイフ(1975)

あらすじ
家族とともに郊外の高級住宅街ステップフォードに越してきたジョアンナは、そこの妻たちに違和感を覚える・・


妻は美しく夫に従順で、家をピカピカに磨き上げていればいい。
by ドナルド・トランプ
と言ったかは知らないが、およそその年代の傲慢な男が言いそうなことだ。


キャサリン・ロス演じるジョアンナは、マンハッタンからステップフォードに引っ越すことになる。
引っ越し当日、彼女はマネキンを抱えて道を歩く男を見かけカメラを向ける。
八頭身で非の打ちどころのない美しいマネキンは、のちに登場するステップフォードの妻たちを象徴している。
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夢の街マンハッタンを離れることには、ジョアンナなりの葛藤があった。
欝々としながらも、なんとか新しい土地になじもうとするが、まもなく彼女はそこで出会うステップフォードの妻たちに違和感を覚え始める。

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フェミニンなファッションに身を包み完璧に家事をこなし、そのことに何の疑問も抱かない女性たち。
男にとっては理想郷だが・・
「何かがおかしい」
ジョアンナは親しくなったボビーとともに謎を解明しようと奔走するが、やがて二人にも危険が迫りくる。

原作者のアイラ・レヴィンはローズ・マリーの赤ちゃんの原作者であり、本作は言ってみれば「不安を抱える妻シリーズ第二弾」である。アイラ・レヴィンの原作が出版された1972年は女性の社会進出が叫ばれるようになった頃で、この映画もフェミニズムと無縁ではない。

キャサリン・ロス演じるヒロインは、カメラマンを夢見ているが子育てに追われ夢を置き去りにしている。
男女同権を訴えても実現にはシステムの整備から必要で、簡単ではなかった時代。
また男性の視点で考えれば、女性が発言権を強くするのは恐怖でしかなく、だから「女は綺麗にして家にすっこんでろ」との男の本音は、そのままステップフォードの妻たちに反映される。
最後にキャサリン・ロスのダミーがいきなり巨乳だったのも、男の理想を形にしたものに他ならない。

ヒロインの憂鬱を前面に押し出しサイコロジカルなスリラーが展開するかと思いきや、終盤一気にSFホラーへとなだれ込む。
ジワジワとその時が迫ってくる気持ちの悪さと、夫たちの共有する秘密のブラックさが、この映画をカルトたらしめているのだろう。妻たちのクリーピーな演技も秀逸で楽しめた。
ニコール・キッド版も観なければ。

映画データ
原題:The Stepford Wives
製作国:アメリ
監督:ブライアン・フォーブス
原作:アイラ・レヴィン
出演:キャサリン・ロス 
   ポール・プレンティス 
   ピーター・マスターソン 
   ナネット・ニューマン