【映画】ムーンライト
ムーンライト(2016) アメリカ
原題:Moonlight
監督/脚本:バリー・ジェンキンズ
出演:トレヴァンテ・ローズ/アンドレ・ホランド/ジャネール・モネイ/アレックス・R・ヒバート/ナオミ・ハリス
マハーシャラ・アリ
【あらすじ】
マイアミの貧困地域で暮らす内気な少年シャイロンは、学校では「チビ」と呼ばれていじめられ、家庭では麻薬常習者の母親ポーラから育児放棄されていた。そんなシャイロンに優しく接してくれるのは、近所に住む麻薬ディーラーのフアン夫妻と、唯一の男友達であるケビンだけ。やがてシャイロンは、ケビンに対して友情以上の思いを抱くようになるが・
【感想】
歴史に残る今年のアカデミー賞で、大どんでん返しの作品賞をかっさらった『ムーンライト』
実は劇場で寝てしまい(咳止めの副作用でとにかく眠かった)記事も書けずじまいだったので、DVDで再見しました。
貧困地域に暮らすシャイロンの少年時代から、青年、大人になるまでを描く本作は、自分探しの青春映画にして、これは黒人社会への応援歌ですね。
この映画を観てまず思うのは、貧困地域で生まれ育った人間が、まっとうな道を歩くのは簡単ではないということ。
父親がいなくて母親はジャンキー、しかも少しだけ女の子っぽい歩き方をするシャイロンは学校でもいじめられ、悪がきに追い回されてます。この生まれながらにハンディを背負っているとも言えるシャイロンがやがて道を外すのは必然にも思えるんですが。。
でもある日彼は、偶然出会ったフアンに声をかけられ、初めて父性のようなものに触れる。
同級生のケヴィンとも馬が合い、彼はケヴィンに友情以上のものを感じ始めるのです。
現実的で絶望的と思えたシャイロンの物語が、そうした「大事な出会い」によって希望を感じさせるものに変わっていくところがこの映画の凄いところでしょうね。
フアンの会話の中で「月明りに照らされると黒人の肌は青く見える」というキューバのお年寄りの言葉が語られます。
黒人だから、貧困地域に生まれたからと言って人生をあきらめてはいけない。
黒い肌が月明りで蒼く輝くように、人は輝くことができる。どんな人間になるかを決めるのは自分自身。
『ムーンライト』というタイトルにはそんな作り手のメッセージを感じました。
ロマンスとしては非常に控えめで、むしろ本当の自分をみつけることの大切さを感じる描き方です。
アカデミー賞助演男優賞を獲得したマハーシャラ・アリのあたたかい演技も印象的ですが、強烈なのはフアンの母を演じたナオミ・ハリス!登場シーンごとにジャンキー度を強め、廃人化していく姿が壮絶でうまいのなんのって。
息子を思うように愛すことができなかった後悔を伝えるシーンでは泣けました。麻薬はアカンでー。
麻薬ディーラーが出てくるからと言ってドンパチがあるわけでもなく、淡々とした作風故退屈に感じる人もいると思う。
おそらくはそれほど制作費もかかっていない、こういうインディーズな映画がオスカーを取る時代なんだなと、少し複雑に感じるのは私だけかな。
個人的な好みとしてはやっぱり『ラ・ラ・ランド』でした(笑)
お気に入り度★4.0