しまんちゅシネマ

映画ノート

レベッカ(1940)

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レベッカ

Rebecca

あらすじ
モンテカルドに滞在中、裕福なマキシムと出会ったヒロインは、後妻として嫁ぎ、マンダレイと呼ばれる屋敷に住むことになる。しかしそこは先妻レベッカの見えない影がすべてを支配していた


アルフレッド・ヒッチコックのゴシックサスペンス。

この映画が凄いのは、タイトルロールの「レベッカ」を登場させることなく、レベッカを恐怖の対象足らしめている点だろう。
ジョーン・フォンテイン演じるヒロインは先妻の評判を聞くにつれ自信を無くし、次第にレベッカの影におびえるようになる。

それに拍車をかけるのが女中頭として屋敷を取り仕切るダンヴァース夫人(ジュディス・アンダーソン)の存在。
レベッカを寵愛し、レベッカ亡き後もレベッカの生活の痕跡をそのまま残そうとする夫人にとって、新妻のフォンテインはレベッカの世界を壊す邪魔な存在でしかない。ましてや自分と同じ平民の出のフォンテインがレベッカと同じものを手にするなど許せるはずもない。

しかし、ダンヴァース夫人はなぜそこまでレベッカに執着したのか。
レベッカとダンヴァース夫人がレズビアンの関係にあったという人もいるけれど、どうだろう。

個人的には2人の間に性的な関係はなかったのではないかと思う。
しかしダンヴァース夫人がレベッカに尋常でない愛情を持っていたのは確かだろう。
彼女にとってレベッカは夢を具現化する対象だったのではないか。

ダンヴァース夫人がレベッカの持ち物に執着する姿から、夫人はレベッカを通し、上流文化に触れ、美しいものをめでる喜びを満たしてきたのではないかと思う。ただしレベッカは誰も愛せない女性で、ダンヴァース夫人の思いはかなわない。そこに夫人の悲しさがあった。

かくして、ヒロインを追い詰めるダンヴァース夫人の瞳が、もはやこの世以外のところを見ていると知るとき、映画はゴシックホラーとして最恐の瞬間を迎えるのだ。


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怖い映画ではあるが、フォンテインとマキシム役のローレンス・オリヴィエの関係は思いのほかロマンティックで、前半は億万長者に求婚されるという、女の子の究極の憧れを描くロマコメとして、やがてホラーからミステリーへとシフトする展開の多様さを楽しんだ。

屋敷を目前にして激しく降り始める雨
「R」のイニシャル
マキシムの多様性を写すスケッチ等、象徴的な表現も印象的。

本作がヒッチコックの渡米一作目ということだが
マンダレイとニューヨークどっちを選ぶ?」とのマキシムの問いに
「ニューヨークは退屈そうだからマンダレイ」と答えさせるところに
ヒッチコックの「心はイギリスにあり」を感じた次第。




映画データ
原題:Rebecca
製作国:アメリ
監督:アルフレッド・ヒッチコック
脚本:ロバート・E・シャーウッド/ジョーン・ハリソン
出演:ローレンス・オリヴィエ
   ジョーン・フォンテイン
   ジョージ・サンダース
   ジュディス・アンダーソン
   グラディス・クーパー