しまんちゅシネマ

映画ノート

雨のなかの女(1969)

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雨のなかの女
The Rain People


【あらすじ】
夜も明けやらぬある朝、夫の眠るベッドを抜け出したナタリーは一人車を走らせる。
途中、元フットボール選手のキルガリー(ジェームズ・カーン)を拾うが
彼は’試合中の怪我がもとで頭に障害を負った青年だった。



幸せな結婚をしたはずなのに、何かしっくりこない。
妊娠し、このまま母になってもいいの?自分本当に大丈夫?
結婚生活に不安を感じるヒロイン、ナタリー(シャーリー・ナイト)は一人、家を飛び出し西へと向かう。

フランシス・フォード・コッポラ初期の監督作品となるロードムービーです。
この前年に撮ったアステア主演のミュージカル『フィニアンの虹』(1968)が思うように仕上がらなかったことから、
あえて低予算で規模の小さな映画にすると決めて撮ったのだとか。

それが功を奏したか、興行的な成功とまではいかないものの、本作でコッポラは自分の腕に自信を持ち、
会社まで立ち上げたとのことなので、その後の活躍の土台となる作品になったのでしょうね。
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しかし作品はヒロインが自分探しに成功する話ではありません。
ヒロインが旅の途中で出会うのは、まずは試合中の怪我がもとで脳に障害を受けてしまった元花形フットボール選手ジミー(ジェームズ・カーン)と訳ありハイウエーパトロールのゴードン(ロバート・デュヴァル)。
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3人の人生が予期せぬ方向にシフトしてしまうのを、まるでヒロインの業のせいであるかのように’描いていて辛い。
漠然と自由を求めるヒロインに明日が見えないのは、『イージーライダー』『真夜中のカーボーイ』に通じるものがあって
多分本作もアメリカン・ニューシネマの流れを汲んでいるんでしょう。

原題のThe Rain Peopleは、劇中ジミーの話す「雨族は雨でできていて、泣けば消えてしまう」というエピソードから。

シャーリー・ナイトがどアップでアイラインを入れるシーンなど、顔のクローズアップを多用した撮影が印象的。
彼女が自分のことを「私」ではなく「彼女」と呼ぶのは自身への違和感や孤独感を表現したのかな。
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小学生程度の知力しか持たないジミーをピュアに演じたカーンも珍しいけれど、
ゴードン役のロバート・デュヴァルは本人と気づかなかったほど。

フラッシュ・ゴードン』ネタには爆笑した。日本語字幕だとどう訳したんだろうと気になります。

瑞々しく刹那的でアンニュイ。コッポラの原石的な才能が光る一本ですね。
これ好き。


映画データ
製作年:1969年
製作国:アメリ
監督:フランシス・フォード・コッポラ
脚本:フランシス・フォード・コッポラ
出演:シャーリー・ナイト
   ジェームズ・カーン
   ロバート・デュヴァル
   マーヤ・ジメット
   ローリー・クリューズ