しまんちゅシネマ

映画ノート

キング・コング(1933)

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キング・コング
King Kong

【あらすじ】
南海の秘境にやってきた映画のロケ隊は、原住民から神と崇められる巨獣キング・コングを目にする。やがてコングは捕獲され、ニューヨークへ見世物として連れてこられるが……。



大昔、旧ブログで『キング・コング』はホラーなのか?で議論を交わしたことがありました。
ようやく観て思うのは、ホラーの部分も確かにあるなということ。

まだ特撮などがない時代に、家ほどもあるゴリラの化け物が人を襲うんですよ。
ストップモーションアニメの手法で撮られたガクガクした動きながら、人を食う、足で踏みつける、逃げ遅れ木に登った人間を執拗に追うと、かなり残虐。
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ニューヨークでの暴れん坊ぶりも相当なもので、高層ビルの一室で寝ているおばさんをむんずと掴んで、アンじゃないとわかるとポイと捨てる。てっきりベッドに戻すと思ったからそこ驚いた。

そんな残虐なモンスターが、なぜかアンに恋してしまうという設定がまた斬新。
アンを襲いかけた恐竜なんか、口を裂いて殺してしまうし、ニューヨークで大暴れするのも、アンを取り戻したい一心。

エンパイア・ステートビルで爆撃されるシーンでも、最後アンに手を伸ばしかけるんだよね。
一瞬、前述の「ビルから落とされたおばさん」の姿が脳裏をかすめるのだけど、コングはアンを掴むことなく、一人ビルから落ちていく。2005年版のコングほど、ヒロインへの恋心を大げさに描かなくても、アンを道連れにしないコングのやさしさにグッとくる。
秘境で静かに暮らしていたコングを無理やり連れてきたのは人間のエゴで、思えば可哀そうな映画ですよ。

数人がかりで扱うほどの大きなかんぬきや『ジュラシック・パーク』を彷彿とさせる高い塀(門)などの大掛かりのセットも迫力。当時最高峰だっただろう映像技術も大いに楽しみました。
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ヒロイン、アンを演じるフェイ・レイは元祖スクリーム・クイーン。
職もなく、空腹で失神してしまうほどだったアンは大恐慌の貧しい時代を反映している。
そんな時代にこれほど水準の高いSF映画が作られたことにも驚くね。


映画データ
原題:King Kong
製作国:アメリ
監督:メリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シュードサック
脚本:ジェームズ・アシュモア・クリールマン/ルース・ローズ
出演:フェイ・レイ
   ロバート・アームストロング
   ブルース・キャボット
   フランク・ライチャー
   サム・ハーディ