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映画ノート

【映画】ヒトラーの忘れもの

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ヒトラーの忘れもの(2015
デンマーク/ドイツ
英題:Land of Mine
監督:マーチン・サンフリート
出演:ローランド・ムーラー /ミケル・ボー・フォルスゴー /ルイス・ホフマン /ジョエル・バズマン /レオン・サイデル /エミール・ベルトン /オスカー・ベルトン

【あらすじ】
1945年5月。ナチス・ドイツの占領から解放されたデンマークだったが、海岸線にはドイツ軍が埋めた無数の地雷が残ったままだった。その除去に、捕虜となっていたドイツ兵たちが駆り出され、除去部隊の一つをデンマーク軍のラスムスン軍曹が監督することになったが・・


【感想】
ナチス・ドイツもので、ヒトラーやその取り巻きの高官たち、あるいやユダヤ人迫害について描かれることは多いですが、ドイツ少年兵たちのその後を描いたものは珍しいんじゃないでしょうか。
彼らの一部は捕虜となり、デンマークの海岸線に埋められた地雷を撤去するという過酷な作業を課せられるのです。
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観ているうちに兵士たちはどこにでもいる普通の若者だとわかってきます。
彼らは両親が生きているか、死んでしまったのかもわからないまま、故郷に戻るという希望だけを胸に、ひたすら地雷を掘り起こすのです。

しかし、簡単な指導を受けただけの少年兵ゆえ、誤って地雷を爆破させてしまうことも度々。
年端のいかない若者に背負わせるにはあまりに大きな戦争の代償。その不条理さに泣けて仕方がなかった。
兵士の人物像や、仲間の絆などが見えてくれば見えてくるほど、撤去作業シーンの緊張度は増すばかり。
ダンケルク』でノーランは時間を刻むような「音」の演出で差し迫る恐怖や危機感を煽ってきましたが、登場人物に対する思い入れが増すことで観客の緊張を高める本作の狙いは王道にしてホンモノ。

しかし、緊張するだけでは映画は面白くならないわけで、
そこに指導のデンマーク人軍曹と少年兵の指従関係を盛り込み、映画に厚みを与えているのがいい。
この軍曹さんがいい味出すんだ、また。
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戦争で受けた心の傷、未来への渇望、人と人の繋がりなどが深く描かれている点で、ヒューマンドラマとして大変見ごたえがありました。

日本でも『ダンケルク』が公開になり、英国の若い兵士の戦争体験がクローズアップされてますが、英兵もドイツ兵も、戦争によって運命を翻弄させられたという点では同じ。そういう意味で『ヒトラーの忘れもの』はダンケルクの合わせ鏡のような位置にある作品といえます。

デンマークがドイツ人捕虜に対し行ったこれらの行為は国の歴史として決して誇れるものではないでしょうけど、それを隠すことなく映画として表現することに寛容なデンマークは知的な国ですね。

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