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映画ノート

【映画】『ビッグ・シック』とアメリカ映画協会トップ10

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アカデミー賞の前哨戦も佳境に入り、めぼしいタイトルも大体出そろった感があります。

先日発表されたアメリカ映画協会賞の作品賞トップ10は以下の通り。
 
 
気になるタイトルがズラリ。
この10本はぜひ観なければってことで、まずはアマゾンのフリーストリーミングにあった『ビッグ・シック』を観てみました。
 
ビッグ・シック
The Big Sick
 
【あらすじ】
シカゴ在住のパキスタンスタンダップコメディアンのクメイル(クメイル・ナンジアニ)は、アメリカ人大学院生のエミリー(ゾーイ・カザン)と恋に落ちるが、ある事からエミリーの怒りを買い破局する。ところが数日後、エミリーは原因不明の病で昏睡状態に陥り、友人から連絡を受けたクメイルが付き添うことになるが・・。

『ドリスの恋愛適齢期』のマイケル・ショウォルターが監督し、クメイル・ナンジアニとゾーイ・カザン主演でパキスタン人とアメリカ人女性の恋の行方を描く恋愛ドラマです。
 
クメイル・ナンジアニのことを知らなかったので、主人公の名前がクメイルでも気づくものは何もなかったんですが、本作はクメイル自身を主人公にした実話ベースのドラマだったんですね。奥さんのエミリー・ゴードンと共同脚本も務めています。
タイトルのビッグ・シックはまんま「大病」。
別れたばかりの元カノが命にかかわる病気になってしまい、クメイルがそばに付き添うことになる。この病気がなければ二度と会うこともなかったかもしれなかった2人の、運命の糸が再び首をもたげ始めるのです。
 
ヒロイン昏睡中。これでラブコメが成立するのかと心配になる題材なのに、エミリー役のゾーイちゃんには申し訳ないけど映画はそれからが本番。
病院にかけつけたエミリーの両親は、初めからクメイルに敵意をあらわにしてるし、実の両親はパキスタン娘との結婚しか眼中になかったり、仕事ではムスリムであるばかりに人種差別的なヤジを飛ばされたりと、元恋人が生死をさまよっているという一大事なのに、クメイルには対処すべき問題が山積。でもクメイルはそれらに誠実に立ち向かっていきます。彼の一本筋が通ったところが心地よくてね。クメイルの姿勢が、頑なだった周囲の気持ちを柔らかく変えていくことになるのが感動的なんです。
 
製作にジャド・アパトーが関わっている割には、下ネタは少なめ。
エミリーの両親を演じたホリー・ハンター、レイ・ロマノのベテラン勢もきっちり脇を占め、ブラックな笑いを盛り込んでも下品にならないところがいい。
 
クメイルの家族の描写を通じて知るパキスタン人家のカルチャーも興味深く、子を思う親の気持ち、親を思う子の気持ちも日本人のそれ以上に伝わってくる。人種差別映画を観るたびに問題の根深さも痛感するのだけど、全然理解できないと切り捨てる前に、互いのことを少し知れば人間同士分かり合えることもあるんだよなぁと、この映画を観て思ったりしますね。
なかなかいい映画でした。
 
こちら本物のクメイルと奥様


映画データ
製作年:2017年
製作国:アメリ
監督:マイケル・ショウォルター
脚本:クメイル・ナンジアニ/エミリー・ゴードン
出演:クメイル・ナンジアニ
   ゾーイ・カザン
   ホリー・ハンター
   レイ・ロマノ
   アヌパム・カー