しまんちゅシネマ

映画ノート

【映画】レディ・バード



レディ・バード
Lady Bird
 
【あらすじ】
サクラメントカトリック系高校に通うクリスティーン(レディ・バード)は地元を離れ都会の大学に行きたいと思っているが、母親と意見が合わず・・


『マギーズ・プラン 幸せのあとしまつ』のグレタ・ガーウィグが初監督&脚本を務め、ロッテントマトで100%(現在は99%)を打ち出すなど評判の『レディ・バード』を観てきました。
 
監督の半自伝とのことで、2002年のサクラメントを舞台に、クリスティーン(レディ・バード)の最後の高校生活を描く青春成長物語です。
シアーシャ・ローナン演じるヒロインはクリスティーンという立派な名前があるのに、自分で「レディ・バード」と名乗り周囲にもそう呼ぶことを強要。そんな変わったところはあるけれど、自分の言いたいことをはっきり言い、将来の青写真も描ける子。
でも母親は夢を追おうとする娘を地元に引き留めようとするもんだから、2人の間には確執が生じてしまう。
カトリックの学校なんて勿論行ったことないし、カルチャーもよく知らない。教会で神父さんが信者の舌の上に置くウエハース?あれをスナック菓子かのようにパリパリ食べるシーンは流石に笑えたけど、会場が笑っていても可笑しさを共有できないことも多くてもどかしかったり。学校、初めてのお酒、友情、初体験云々も青春から遠く離れすぎた身としては響きにくいところがありました(哀)
 
ところがあるところから急に映画が輝いてくる。
キレたシアーシャの姿がグレタ嬢に見えた瞬間、あ、レディ・バードは監督自身。これはグレタ嬢の物語なんだと気づいたからなんですね。最初から半自伝と知って観れよって話だけど(汗)
そう思うと、途端に友人たちや家族を見つめる視線のすべて、ヒロインの暮らす街や風景までもが愛おしく感じられてね。すれ違っていた母親との関係性が少しづつ変わっていく様子にもこみ上げるものがありました。
 
痛みやフラストレーションを抱えながらも、内に優しさを秘めたヒロインを演じたシアーシャはやっぱりうまい。コメディエンヌって、バカやるだけじゃなくて人の心を揺さぶってこそ本物。劇中劇のミュージカルシーンで聴かせてくれた歌声にもポテンシャルを感じます。
母親マリオンを演じ、オスカー有力候補の一人とされるローリー・メトカーフがまた最高でね。母親ってこうなんだよなぁと、誰もが自分の親のことを思いだすんじゃないかな。この母娘の関係に共感を呼ぶところが本作の最大の強みでしょう。
 
冒頭、アルバムをめくるように見せるサクラメントの街並みがウディ・アレン映画のようで素敵。でも最後にもう一度、母と娘の目線でさりげない街角の風景を見せられると、じわじわじわと気持ちが高揚して得も言われぬ多幸感に包まれるんです。
なんだこれはと、こんなこと最初からできるグレタ・ガーウィグにただただ感服したのでした。
 
今のところ、ゴールデングローブはじめ、アカデミー前哨戦の作品賞のほぼすべてにノミネートされてるので、オスカーノミネートもありでしょう。監督賞、脚本賞、主演女優賞、助演女優賞など何部門に絡んでくるかも注目です。

映画データ
製作年:2017年
製作国:アメリ
監督/脚本:グレタ・ガーウィグ
出演:シアーシャ・ローナン
   ローリー・メトカーフ
   トレイシー・レッツ
   ルーカス・ヘッジズ
   ティモシー・シャラメ