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映画ノート

【映画】シェイプ・オブ・ウォーター(2017)


 
Shape of Water
 
ヴェネツィア国際映画祭で最高賞受賞し、オスカー最有力候補の一本とされるギレルモ・デル・トロの新作です。
 
サリー・ホーキンス演じるイライザは言葉を話せない女性。
政府の極秘施設の清掃員をしているイライザは、研究室で水槽に入った生き物を見つけます。
なんとアマゾンで捕獲された半魚人。
 
時代は冷戦時代、政府は両生類である半魚人を研究し、戦争の兵器を開発しようとしてたんですね。
ところが、マイケル・シャノン演じる役人は半魚人を拷問しまくった挙句、殺して解剖しようと言い出す。
半魚人を愛し始めたイライザは、いてもたってもいられず・・・という話。
 
言葉を話せない掃除婦と半魚人の恋物語
異形なものや弱いものに温かい目を向けるのはデルトロ監督らしい。
 
イライザのアパートの隣人、ジェンキンスさん演じるゲイの画家も、イライザの仕事仲間のオクタヴィア・スペンサー
62年という時代を考えるとひっそり生きていかねばらない存在で
そうしたマイノリティな面々と、ブリーな政府関係者を対極に置く構図は今のアメリカを投影してるようです。
という、影のストーリーは置いておいたとしてもデルトロらしい様式美を放つ本作は魅力たっぷり。
 
何と言っても素敵なのはヒロインの愛するミュージカルを始めとしたクラシック映画の世界観。
お隣のジェンキンスさんとソファーに座ってタップを踏んだり、想像の世界に入り込んだり
このあたりは『ララランド』にも通じるところで
自分だってデイミアン・チャゼル以上に古い映画を愛してるよ!っていう監督の言葉が聞こえてきそう。
 
そしてその世界に見事にはまり込むのがサリー・ホーキンス
冒頭から彼女の仕事に行くまでのル―ティンをリズミカルに見せる中、いきなり始まるバスタブでの自慰行為には驚くけれど
何か満たされないものを持ちながらも心優しく、友や隣人に愛されるヒロインを魅力的に演じてます。
 
 
ジェンキンスさんと一緒にいるシーンでは満たされないもの同士が共有する儚さや優しさが漂って
いつまでも観ていられるほど和むんですよね。禿ネタもナイスなジェンキンスさん好演です。
 
そもそもこの映画自体が監督が6歳のときに観た『大アマゾンの半魚人』への思いがもとになっているとのこと。
人間に恋して無残に殺される物語に、6歳のデルトロは大声で泣き、以後なんとか半魚人の恋を実らせてあげたいと思い続けていたらしい。おませさん(?)(笑)
本作は長い構想の末にようやく完成した思い入れの強い一本であり、デルトロ映画の原点と言えるかもしれませんね。
 
本作の見ものの一つ、鱗に覆われた半魚人のお姿は演じるダグ・ジョーンズの小顔スレンダーな美しき肢体も相まって、これがCGでないことに驚くほどの出来。
デルトロはこのクリーター造成に3年を費やしたと言うからここにも彼の思い入れのほどが伝わります。
 
イライザと半魚人の恋の行方は映画を観ていただくとして
さりげなく散りばめた伏線を見事に回収する構成も見事。
美しい大人のファンタジーでした。
 

映画データ
製作年:2017
製作国:アメリ
共同脚本/ヴァネッサ・テイラー