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映画ノート

【映画】ストロンガー(2017)ボストンマラソン爆弾テロ被害者ジェフ・ボウマンの回顧録より


ストロンガー
Stronger
 
2013年 ボストンマラソンで起きた爆発テロ事件を覚えている方は多いでしょう。
前の年に訪れボストンが大好きになった私としても衝撃が大きく、
犯人が逮捕される4日目までテレビのニュースに釘付けになりました。
 
子供を含む死者は3人、負傷者は282人に上る中
両膝から下がカーテンのようにズタボロになった姿で車いすで搬送される青白い顔の若者の映像が特にショッキングでしたが
そのカーテン青年(失礼!)ジェフ・ボウマンの回顧録をもとにボウマンの再生のドラマとして映画化したのが本作。
ボウマンをジェイク・ギレンホールが演じ、デヴィッド・ゴードン・グリーンがメガホンをとりました。
 
まずボウマンをめぐるヒューマンドラマとして秀逸
冒頭、ボウマンが職場であるコスコで、チキンのグリルを焦がす失敗をやらかすシーンがあります。
上司と後片付け役の清掃のおばちゃんに許しを請い、彼はなんとかクビを免れるシークエンスで
実話に基づくのか田否かはわかりませんが、それによって主人公の人となりがわかるのはうまい作り。
主人公は決して悪い奴でなくむしろ友人から愛されるキャラだけど、責任意識に乏しい甘ちゃんなところがあって
ガールフレンドのエレンともその性格がネックで別れてはくっつくの繰り返し
テロに遭った当日も、喧嘩別れをしていたエリンと寄りを戻すべく、ゴールで待つことを約束していたのです。
 
責任を感じたエリンは懸命にボウマンを介護し、ボウマンもリハビリに取り組むものの
テロ解決に貢献したヒーローにしてボストンストロングの象徴とされ、心も身体もついていけないまま、ストレスをためていくんですね。
 
そんなとき、ボウマンの気持ちに変化をもたらす出会いがあります。
人は誰かに助けられているようで、実は助けていることもある。
自分は何も出来ないと虚無感に苛まれていたボウマンが、自分の役割を認識して成長する姿
ボウマンがテロのトラウマを乗り越え、エリンと本当の絆を築いていく姿
ボストンの希望となって、人々の心を一つにするさまに涙が止まりません。
 
これはどうなのと思うところを挙げるなら、まずボウマンの家族の描き方ですね
息子の心を理解しない母親を演じるミランダ・リチャードソンをはじめ、やさぐれた家族が見ていて辛い。
実在する一般の人たちを、下品というか粗野に表現していることに申し訳なさまで感じるけど、これはボウマンが手記の中でオープンに表現してるからでしょう。母親にも反省と成長が見られるわけで、家族を含めた再生の物語と捉えればいいのかな。
 
あと、どうしても愛国心が前面に出てしまっている点で、アメリカ人以外は鼻白むやもしれません。
両足を失ったボウマンを演じたジェイクは肉体的にも大変だったと思うんですが
苦悩するボウマンをどこかユーモアを湛え演じていてうまかった。
 
愛国心に寄らない形で締めくくられていたら、映画も評価されやすく
ジェイクのオスカーノミネートもあったかも。いやまだわかりませんが。
 
ボウマンさんとジェイク

映画データ
製作年:2017年
製作国:アメリ
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
脚本:ジョン・ポローノ
出演:ジェイク・ギレンホール
   タチアナ・マスラニ
     ミランダ・リチャードソン
   リチャード・レーン・Jr
   クランシー・ブラウン