しまんちゅシネマ

映画ノート

ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男


Darkest Hour
ゲイリー・オールドマンウィンストン・チャーチルを演じ主演男優賞、日本の辻和弘さんがメイクアップ&ヘアー賞部門でアカデミー賞を獲得したことで話題の一本
日本滞在中に上映が終わってしまったのでDVD鑑賞しました。
ダンケルクに取り残された若い兵士たちを救出せねばという話しを、戦場の爆撃シーンを見せることなく、チャーチルを中心とした政治家の会話劇で見せきったジョー・ライトは潔いな。
ひたすら現場の緊張を描いたノーランの『ダンケルク』とは真逆の作りと言えます。
それでも『ダンケルク』に引けを取らないエンタメ性までもたらすことに成功してるのは
予測不能がゆえに魅力的なチャーチルを演じきったゲイリー・オールドマンの熱演のたまものでしょう。
ゲイリーは入念にリサーチし、チャーチルを知り尽くしたうえで演じたんでしょうね。
辻さんによるメイクで本物そっくりな外観になってるのは勿論凄いですが
声の出し方から姿勢、表情に至るまで演じこみ、単にリーダーシップに長けた政治家としての一面でなく、信念と内からにじみ出る人間性を感じさせてくれるのはあっぱれ。
終盤のスピーチシーンなどゲイリーにこんなパワーがあったのかと驚くほどでした。
共演者も一市民の正直な気持ちを垣間見せた秘書役のリリー・ジェームズ
チャーチルを支える妻をりりしく演じたクリスティン・スコット・トーマスと女性陣も好演
個人的にツボだったのはいつも汚くてヨレヨレなイメージのベン・メンデルソーンが国王を演じていたこと。
英国王のスピーチ』でコリン・ファースが演じたジョージ6世ですよね。
勿論小奇麗で(笑)、品良さげに演じているのだけど、気の弱さとユーモアを湛えてくるのがメンデルソーンらしくて嬉しい(笑)
印象に残ったのは地下鉄でチャーチルが市井の声に耳を傾けるシーン
そこから終盤にかけての盛り上がりも最高で、映画として見ごたえありました。
一方、その後数年続いた戦争により失われた命を思うと複雑な思いにもかられるんですよね。
途中、チャーチルが思わしくない戦況を国民に伏せ、善戦してるかのように伝えるのは、ベトナム戦争の苦境を隠したアメリカ政府にも通じるところがあるわけで・・。
原題は『ダーケスト・アワー』
当時の状況をさしてチャーチルが演説の中で使った言葉ではあるけれど、『ペンタゴン・ペーパー』を観た後だと、「暗黒の時代」に戻ってはいけないというメッセージにも感じたな。
ま、そんなこともあって、タイトルは原題のままでよかったんじゃないかと思ったのでした。
とりあえず副題はピンとこないわ。

映画データ
製作年:2017
製作国:イギリス
脚本:アンソニー・マクカーテン
ロナルド・ピックアップ