しまんちゅシネマ

映画ノート

午後8時の訪問者(2016)


午後8時の訪問者(2017) 

The Unknown Girl
 
久々の映画記事は、ダルデンヌ兄弟監督/脚本のヒューマンサスペンス
 
診療所のピンチヒッターを務める若い女医ジェニーは、診療時間を一時間も過ぎた午後8時に鳴らされたベルに応じなかった。
ところが翌日、それは診療所近くで死体となって発見された身元不明の少女だったと知ることになります。
 
「あのとき、ドアを開けていれば、少女は死なずに済んだのではないか」
そんな思いから、少女の身元と死の真相を知ろうと奔走するジェニーですが、やがて彼女に身の危険が迫り・・というお話です。
 
ありがちな素人探偵ものの様相ながら、特殊なのはジェニーが医者であるという点。
冒頭、研修医を指導しながら、聴診で病気の診断を下すシーンは、映画の導入として巧妙です。
ジェニーはその後、医者の経験や知識を生かして、また人の言葉に耳を傾け、事件を解き明かしていくのですから。
 
赤川次郎的なミステリーを楽しむ作品ではないですが、ジェニーの罪悪感と、命に向き合うものの一途さみたいなものが、登場人物の心を開かせ、事件に光を当てていくところが面白く、最後にはひとしきり爽やかな風が吹くような、味わいあるヒューマンドラマに仕上がっています。
 
ちなみにヒロインには最初マリオン・コティヤールがキャスティングされていたようですけど、うまくいかずアデル・エネルに交代したらしい。確かにね、マリオンだと大人すぎて、ジェニーの危うさや無垢な一途さは出なかったかもと思う。
 
ただ、それでも被害者の身元捜しに奔走するヒロインの行動はやりすぎ感があって、若さや罪悪感だけでは説得力に欠けるかなぁ。
被害者が身元不明のまま葬られようとすることにあそこまで心を砕く、彼女の心情を裏付ける背景などが説明されているとよかったかも。
 
あと、彼女がいつも同じコートを着てたのが逆に気になった。
ファッションなどあまり気にしない、仕事一筋なタイプなのを強調していたのかもと思うけど、他に何か意味があったのかしら。