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映画ノート

この子の七つのお祝いに(1982)

 
この子の七つのお祝いに
 
【あらすじ】
ルポライターの母田耕一(杉浦直樹)は、磯部大蔵大臣の私設秘書である秦一毅の身辺を探っていた。だがその矢先、秦の家で働いていたお手伝い(畑中葉子)が殺されてしまう。手型占いをしているという秦の内妻の青蛾を追う母田は、後輩の須藤(根津甚八)に連れて行かれたバーのママゆき子(岩下志麻)と知り合うが・・・
 
増村保造監督による角川作品
殺人事件の真相をめぐるミステリーです。
古めかしい木造アパート、薄暗い部屋にひっそりと佇む日本人形、枕がふたつ置かれた布団と
これだけでホラーっぽい雰囲気が漂うのだが、怖さに拍車をかけるのが岸田今日子さん。
あの声で「とうりゃんせ」を歌い、幼い娘に「私たちを捨てたお父さんを探して復讐してね、きっとよ」と念を押すのだから強烈です。
 
三十年余りの歳月が過ぎ、政治家の元お手伝いが殺されるという事件が起きる。
政治家の身辺を探っていたルポライターが真相に迫るべく奔走するが、あの母子との関りは?という話。
 
とりあえずは、想定の範囲内。それでもひねりは加えられていて、「まさか な」から「やっぱり」へと、抱いた疑問が解消されていくのが心地いい。なぜ人形を印象的に映しているのか、なぜ母親は幼い娘に復讐を託すような残酷なことをしたのか といったことにも答えがあった。
 
ネタバレではありますが・・
娘が復讐を実行に移したのは母親から洗脳されたからだけだったろうか。。
母親の行動は常軌を逸しており、狂気の沙汰ではあるけれど、彼女が娘を見る瞳はやさしかったんだよねぇ。
娘は母親に愛情を感じたからこそ、母の思いにこたえようとしたのではないか。そんな風に思う。
狂気の中に母性を演じた岸田今日子さんが素晴らしく、岩下志麻の美貌さえもかすんでしまった。
鮮血ほとばしるゴーリーな見せ方ながら、戦争の残した爪痕と悲しき情念が心に残る昭和のミステリーでした。


映画データ
製作年:1982年
製作国:日本
監督:増村保造
脚本:松木ひろし増村保造
出演:根津甚八
   岩下志麻
   杉浦直樹
   辺見マリ
   芦田伸介
   岸田今日子
   畑中葉子
   中原ひとみ